役員社宅を使って節税する5つのポイント
実質の家賃や役員報酬は変わらず、法人税や役員個人の社会保険料を少なくすることができるという点で、多くの会社で採用されている役員社宅による節税。
本記事では、役員社宅を活用した節税方法、それにあたっての注意点について解説します。
そもそも社宅とは?
会社が従業員や役員のために比較的安い賃料で提供する住宅を指します。
社宅と似たものとして社員寮がありますが、この2つの言葉に明確な違いはありません。
一般的には社宅は家族向け住宅、社員寮は単身向け住宅と区別されています。
また、社宅には社員寮のようにキッチンやバスルーム共用ではなく、通常のマンションやアパートが提供されるケースが多いです。
社宅と住宅手当(家賃補助)との違い
社宅はあくまで、従業員や役員のために会社が契約しているアパートやマンションを貸すものであり、住宅手当(家賃補助)は従業員が住んでいる持ち家、またはこれから借りる物件の賃料を補助する制度になります。
物件の契約は法人ではなく従業員個人の名義となります。
役員社宅の節税メリット
役員社宅を節税に活用すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
大きく以下の3つになります。
全額損金にできる
マンションやアパートなど役員が居住している物件を会社名義で契約し家賃の一部を経費とすることで、家賃を全額損金として扱うことができます。
また、賃料だけでなく共益費や仲介手数料、鍵交換代、火災保険料なども経費に計上できます。
社会保険料の負担を減らせる
通常、社会保険料の金額は「標準報酬月額」というルールで決められています。
報酬や賞与が増えるほど、会社が支払う社会保険料も増加します。
役員社宅も従業員と同様に報酬から家賃を天引きします。
つまり、最終的な役員報酬の金額は少なくなるため、社会保険料の負担も軽くなります。
役員の手取り額を増やせる
役員報酬から天引きされるため、家賃を自己負担する場合と比べると表面上では手取り額は少なくなりますが、所得税や住民税や社会保険料などの負担が少なくなるため、結果的に手取り額は多くなります。
役員社宅で節税する方法
役員社宅で節税するには、下記3つの手順を行います。
自己負担額を計算・決定する
まず、役員が負担する額「自己負担額」を決めます。
なぜ決める必要があるかというと、会社が全額賃料負担または50%以上の賃料を負担していると給与として課税されてしまい、役員個人の所得税が増えてしまうためです。
役員の自己負担額は、物件の床面積によって下記の2つに分類されます。(国税庁より抜粋)
小規模住宅の場合
小規模住宅とは、下記を満たす物件のことを言います。
- 法定耐用年数が30年以下で、床面積が132平方メートル以下の住宅
- 法定耐用年数が30年以上で、床面積が99平方メートル以下
※区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定
小規模住宅の自己負担額の計算方法
1〜3の合計額が賃料相当額となります。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
小規模住宅以外の場合
小規模住宅に該当しない場合は、自社所有の社宅、他から借り受けた住宅等で計算方法が異なります。
自社所有の社宅の場合
1、2の合計額の12分の1が賃料相当額となります。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12% ※法定耐用年数が30年以上の建物は12%ではなく10%
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
他から借り受けた住宅等の場合
・会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額
ちなみに、240㎡を超えていて物件値段や内装・家賃などが高いなどの条件をもつ物件は、「豪華住宅」に該当する恐れがあります。豪華住宅になってしまうと賃料全額が役員の負担となります。
社内規定を整備する
従業員の社宅利用に関する規定を準用することは問題ありませんが、今後も役員社宅を利用するケースが増えるのであれば、別途、社内規定に役員社宅にかんする項目を記載する必要があります。
法人名義で契約する
役員社宅にするには、法人名義での契約が原則となります。
すでに役員個人が物件を借りている場合は、法人名義への変更が必要となります。
賃貸物件では契約名義変更ができないため、一度契約を解除して新しく契約し直さなければいけません。
ちなみに、不動産の賃貸契約を法人で行う場合は、個人の時と比べて審査が厳しく、事業の安定性やホームページの情報や資本金といった信頼性の部分をチェックされるため注意が必要です。
役員社宅で節税する時の注意点
最後に、役員社宅で節税する時に気をつけたいポイントについて解説します。
家賃以外の光熱費などは経費に算入できない
家賃以外の水道光熱費や駐車場代などは経費に算入できません。
万が一、会社が水道光熱費などを負担してしまうと、給与としてみなされて役員の所得税が高くなってしまいます。
個人名義の住宅は経費にならない
個人名義では社宅としてみなされず、役員の給与として課税されてしまいます。
役員社宅で節税をしたいなら、必ず法人名義で締結し直しましょう。
役員が支払う家賃が50%以上だと、節税効果が薄くなる
自己負担額は家賃の50%程度にすることが多いですが、上記の計算方法を使うと50%以下であるケースが多いです。
会社が負担する家賃の割合が多いほど、経費算入できる金額も増え節税効果も高くなります。
住宅ローンの控除は受けられない
個人で住宅を購入する際には、住宅ローンの控除を受けられますが、会社が住宅を購入する場合は対象外となります。
役員が支払う家賃が低い、または無償だと給与扱いになる
役員が負担する家賃が低かったり無償だったりすると、会社が支払う家賃が給与報酬として扱われ、節税効果が得られません。
前述したように、物件の床面積に基づき正確に自己負担額を計算しましょう。
まとめ
役員社宅を節税に活用すると、家賃を全額損金として扱えるほか、役員の手取り額を増やせて会社・役員双方にとってメリットがあります。
ただし、役員が負担する家賃が極端に低い、無償の場合は給与報酬として扱われてしまうので注意が必要です。