白色申告で税務調査が来る確率や可能性は?対象になりやすい人の特徴についても
「白色申告だと、税務調査に入られにくい」という話をよく耳にしますが、実態はどうなのでしょうか。結論からいうと、白色申告でも税務調査に入られる確率は変わりません。本記事では、白色申告における税務調査について詳しく解説いたします。
そもそも、税務調査とは何か?
税務調査とは、税務署が納税者の申告内容が正しいかを確認するために行う調査を指します。税務調査には、大きく「強制調査」と「任意調査」の2つがあります。
強制調査は、税務署または国税局が重大な脱税行為があると判断した際に令状に基づいて強制的に実施されるものです。一方で、任意調査は申告内容の正確さや申告漏れの有無を確認する目的で行われます。
一般的には、税務調査の多くは任意調査で事前通知されます。ただし、任意調査という名称ではあるものの、正当な理由のないまま帳簿の提示を拒否したり、質問に回答しなかったりした場合には罰則が科せられることがあります。
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青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告では提出書類が異なります。白色申告は、青色申告を行わない事業者が選択する申告方法で、確定申告書も簡易的です。また、帳簿作成についても単式簿記で対応できます。
一方、青色申告を選択すると最大65万円の特別控除を受けられるなど税制上のメリットがあるものの、白色申告ではこの控除を利用できません。さらに、白色申告では翌年以降に赤字の繰越が原則認められないため、もし赤字の状態が続くと、資金面で負担が増大するリスクがあります。白色申告は書類作成が楽になる一方で、節税効果が高いのは青色申告の方だといえるでしょう。
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白色申告だと税務調査に入られる確率は下がる?
白色申告は、主に個人事業主やフリーランスなど事業規模が比較的小さい業者が選択することが多い方法です。「白色申告だと、税務調査が来にくい」というイメージをもたれている方もいると思いますが、申告の種類で税務調査の来る確率は変わりません。それよりも、新分野のビジネスや特定の業種、または申告者の売上や所得など総合的に勘案し判断されます。
300万以下の白色申告者は税務調査の対象になる?
2013年以前は、課税所得が300万円以下の白色申告者については会計帳簿を記帳する義務が免除されていました。そのため、費用計上する項目の根拠資料や証憑(証拠書類)の提出が求められることもありませんでした。しかし、帳簿の作成・管理に不備が散見され、その根拠となる証憑が適切に保管されていない事例が頻発していました。
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また、会社の雇用されている方が副業を白色申告の対象として申告していた場合、不適切な税金還付を受けるような問題も発生していました。税制の公平性を確保する観点から2014年1月より税制が改正されました。現在では課税所得が300万円以下の白色申告者であっても、帳簿の記帳や作成が義務化されています。
税務調査の対象になりやすいケース
税務調査の対象となるケースとして、以下のような状況が挙げられます。
利益や売上に大きな変動があった
売上が増加すると、通常は納税額も比例して増えます。売上が急増しているにもかかわらず利益の伸びが少ない場合には、所得隠しの疑いがかけられ税務調査が実施される恐れがあります。
仮に、利益を圧縮する経費や損金が発生している場合でも、税務調査が行われることがある点には注意が必要です。
事業規模が大きい
事業規模が大きい法人は税務調査の対象になる傾向にあるといわれています。しかし、事業規模が小さい法人や個人事業主であっても、不審点が見つかった場合には税務調査が実施される可能性もゼロではありません。事業規模に関わらず、日頃からしっかりと帳簿を作成し、関連する証拠書類を適切に保管することが重要です。
設立年数が長いのに、利益が少ない
法人税などの納税額は、所得金額に所定の税率をかけて税額控除額を差し引くことで算出されます。設立年数が長いのにもかかわらず、利益の伸びが少ない、同業他社と比較して売上や利益率が低い場合には、計算ミスや意図的な不正を疑われる恐れがあります。
また、「わずかな赤字」や「わずかな黒字」といった状況も、利益を調整した疑いをもたれる要因となり、税務調査の対象になりやすいとされています。
過去に指摘を受けたことがある
過去に申告ミスを指摘された、あるいは過去の税務調査で申告漏れや誤りが確認された場合には、問題が解決しているかを確認する意味合いも含め、税務調査が再度実施されることがあります。
先に述べたように、税務調査の多くは任意調査で事前通知が行われます。実地調査が行われる前に必ず帳簿や証憑に不備がないかを確認し、調査員からの質問に誠実かつ正確に対応することが重要です。
税務調査が入りやすい業種である
2024年に国税庁が交付した資料によると、下記に該当する市場は積極的な税務調査が行われています。
- シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を⾏っている方
- 暗号資産(仮想通貨)等取引を⾏っている方
さらに、下記は申告漏れの⾦額が高額な業種トップ10になります。該当する方は十分注意して、確定申告の書類作成や手続きを行いましょう。
- 経営コンサルタント
- ホステス、ホスト
- コンテンツ配信
- くず⾦卸売業
- ブリーダー
- 焼き鳥
- 太陽光発電
- 内科医
- スナック
- ⻄洋料理
申告書類に不備が多い
申告書類で不正が疑われる場合、以下のような例が考えられます。また、帳簿に証拠が残りにくい事例として多額の現金取引を行っていることも税務調査を招く要因となります。
- 前年度と比べて在庫や売掛金が激減している
- 買掛金や未払金が激増している
- 勘定科目が大幅に変動している
- 貸借対照表の項目に明らかに不自然な数値がある
- 貸借金や貸倒損失など一時的損失の数値が大きい
- 消費税の還付を受けている
白色申告で適用されるルール「推計課税」とは?
推計課税とは、税務当局が入手可能な情報や統計データをもとに、推計して課税額を決定する方法です。税務調査の際、適切な帳簿や記録がない、または不十分なときに適用されることがあります。
場合によっては、証明資料があるときよりも課税額が高くなることがあります。
推計には、同業他社の平均的な売上や利益率を参考に、納税者の売上や所得を推計する方法や、資産の増加額から課税所得を推定する方法、仕入れ額や経費から逆算して売上を推計する方法などが用いられ、ケースごとに最も合理的な方法が適用されます。
まとめ
税務調査の対象になってしまうと、その後、数年間は継続的に税務署から説明を求められる可能性も。
万が一、確定申告で不明点がある方は税理士や会計士などの専門家にご相談ください。当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。