相続税の物納ができない土地・不動産は?できない理由と対応策
原則、相続税の納税は現金での一括納付が求められます。一括納付が困難な場合には「物納」という制度が用意されています。しかし、物納は誰でも認められるわけではなく、申請が通らないケースも少なくありません。本記事では、相続税の物納できない原因や物納できない財産、そして物納が認められなかった場合の対応策について詳しく解説します。
相続税の物納とは
相続税は被相続人が亡くなり、財産を相続した時に発生します
期限内に現金一括で納付することを原則としています。
しかし一括納付ができない場合は、延納という納税額を分割払いできる制度があります。
延納を利用しても現金での納付が難しい場合、物納を検討できます。
相続税の物納ができない理由5選
相続税の物納ができない主な理由を解説します。物納は条件が厳格に定められているため、事前に理解しておきましょう。
金銭での納付が困難な理由が不十分
物納は「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合」にのみ認められます。
まず延納を検討し、それでも支払いが困難であることを証明しなければなりません。
個人の預貯金、保険金、その他の換金可能な資産が十分にある場合、税務署は物納が不適応だと判断します。
現金化できる株式や保険の解約返戻金などがある場合、まずそれらを納税に充てるよう求められます。
必要書類の不備がある
物納をするには期限内に申請書類の提出が必須です。
書類に不備があると申請できないか、審査が長引く原因となります。
物納申請に必要な主な書類は、次のとおりです。
- 相続税物納申請書
- 金銭納付を困難とする理由書
- 物納する財産の目録書類
不動産の物納を検討している場合は、そのほかに登記事項証明書や住宅地図の写しに加え、状況に応じて借地権の内容を示す資料や境界確認書類なども求められます。
物納財産の順位が守られていない
物納には順位が厳格に定められています。
原則として上位の財産から順に検討され、後順位の財産は簡単には認められません。
後順位の財産を物納に充てられるのは、次のような場合に限られます。
- 税務署が「特別の事情がある」と認めた場合
- 先順位の財産に適当な価額のものがない場合
そのため、手元にある財産であれば何でも物納できるわけではない点に注意が必要です。
物納に充てられる財産は、次の順位で定められています。
【第1順位】
不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
【第2順位】
非上場株式
非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
【第3順位】
動産
(参考:国税庁|相続税の物納)
物納劣後財産しかない
物納劣後財産とは、ほかに優先して物納できる財産が存在しない場合に限り、例外的に物納が認められる財産を指します。
具体的には、法令違反で建築された建物、農業振興地域内の土地、市街化調整区域内の土地などが該当します。
これらの財産は利用や処分に制限があるため、原則として物納が難しいとされています。
手元に物納劣後財産しかない場合、相続税の物納が認められないケースがあり注意が必要です。
事前に財産の区分を確認し、延納や資金調達の検討も視野に入れておきましょう。
管理処分不適格財産に該当する
物納できない理由として、物納申請した財産が「管理処分不適格財産」に該当することが挙げられます。
国が受け入れた後の管理や換価処分が困難な財産は、たとえ不動産であっても物納できません。
国は物納を許可すると納められた物納財産を換価する手続きに入るため、売却に支障がある物件や管理にあたって国に負担が生じるものは受け入れないという方針があります。
関連する記事:相続税の物納できる金額は?計算方法と改正点
物納できない財産(管理所分不適格財産)とは
物納できない財産(管理所分不適格財産)に該当する土地や不動産を紹介します。
担保権が設定されている不動産
抵当権や根抵当権などの担保が設定されている不動産は、売却時に支障が生じるため物納できません。
借金がくっついている不動産を国がもらっても、売却(換金)できないから
物納を検討する場合は、事前に担保を解除しておく必要があります。
境界が明らかでない土地
隣地との境界が不明確な土地は、国が取得しても売却が困難です。
物納する土地は、隣地との境界確認や境界標の設置を生前から準備しておきましょう。
権利の帰属について争いがある不動産
所有権について係争中の不動産や真の所有者が確定していない恐れがある不動産は、国が係争に巻き込まれるリスクがあるため物納できません。
公道に通じない土地(無道路地)
民法第210条に規定される通行権の内容が明確でない土地は、建築基準法に基づく建て替えができず市場価値がないため物納は認められません。
借地権者が不明な土地
借地契約がある土地で借地人の所在が不明な場合、借地料の請求や契約の引継ぎに問題が生じるため物納不適格と判断されます。
例えば昔からの口約束のみで受け継いだ土地など、契約書がない場合は更新時などの機会に契約書を整備しておくと良いでしょう。
共有不動産の一部
共有者全員が物納申請する場合を除き、共有不動産の一部のみを物納することはできません。
耐用年数を経過した建物
所得税法に基づく耐用年数を経過した建物は、通常の使用ができるものを除き物納できないと判断されます。
敷金返還義務のある不動産
賃貸物件で敷金の返還義務を国が負うこととなる不動産は対象外です。
預り金や敷金を精算しておく必要があります。
土壌汚染がある土地
土止め対策や土壌汚染などの整備撤去に費用がかかり、国にとって管理処分の費用が収納価額と比較して過大となる不動産は対象外です。
公序良俗に反する目的に使用されている不動産
公の秩序や善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産は、国が所有するわけにいかないため対象外です。
また、暴力団員等が土地の権利を持っている場合も物納はできません。
株式における管理処分不適格財産
株式についても、譲渡制限株式、質権などの担保権が設定されている株式、権利について争いがある株式、暴力団員等が支配する会社の株式などは物納できません。
物納ができない時の対応策
物納ができないと判断された場合、次のような対応策があります。
延納制度の活用する
金銭での納付が困難ではないことを理由に物納申請が却下された場合、却下通知を受けた日の翌日から20日以内に延納を申請できます。
延納とは、相続税を最長20年にわたって分割払いできる制度です。
相続税額が10万円を超え、金銭で一括納付することが難しい場合に活用できます。
ただし、延納には利子税がかかる点に注意が必要です。
利子税の割合は、不動産等の割合や延納期間によって異なります。
不動産の売却する
物納では相続税評価額での納付となるため、実際の市場価格より低い価格で財産を手放すことになります。
不動産を市場で売却すれば相続税評価額より高い価格で売れる可能性があり、結果的に有利になるケースが多くあります。
相続税の納期限は相続開始から10ヶ月ですが、売却には時間がかかるため早めの検討が必要です。
金融機関からの借入を検討する
銀行などの金融機関から融資を受けて相続税を一括納付し、その後分割で返済していく方法も選択肢の一つです。
延納にかかる利子税よりも低い金利で借り入れできる場合は、総負担額を抑えられる可能性があります。
物納財産の整備し再申請する
物納できない財産(管理処分不適格財産)を理由に物納申請が却下された場合、翌日から20日以内に別の財産で1回限り再申請できます。
また、管理処分不適格財産に該当する理由を解消できる場合(例:担保権の抹消、境界の確定など)は、それらを整備した上で再申請することも可能です。
相続税の物納を検討する際の注意点
物納申請前に押さえるべきポイントを解説します。
申請期限は必ず守りましょう
物納申請は相続税の納期限(相続開始から10ヶ月)までに行う必要があります。
期限を過ぎると原則として認められません。
却下された場合の再申請や延納申請への変更も20日以内という短い期間で判断しなければなりません。
利子税や延滞税の負担を考慮する
物納申請が却下または取り下げとなった場合、納期限までさかのぼって利子税が課されます。
また、期限を過ぎてしまった場合は延滞税が課される可能性があります。
想定外の税負担が生じることもあるため、資金計画を含めて慎重に納税方法を選択することが重要です。
専門家に早めの相談を
物納が許可されても、物納財産の収納価額は相続税評価額となります。
不動産の場合、売却した方が有利なケースも少なくありません。
さらに物納は手続きが複雑で審査も厳格です。
相続発生後できるだけ早い段階で税理士など専門家に相談しましょう。
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まとめ
相続税の物納は、原則現金一括納付ができない場合の特例制度です。申請は厳格な条件と期限があり、すべての財産で認められるわけではありません。
物納できない財産や申請不備があると却下されるため、延納や融資などの代替策も検討し早めに専門家へ相談することが重要です。
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