【令和7年改正】相続税の物納許可限度額とは?計算方法と注意点
相続税は金銭で納付することが原則ですが、どうしても現金での納付が難しい場合は「物納」という方法があります。物納許可限度額とは物納できる上限額のことです。相続税の全額を物納できるわけではなく、現金や延納で支払えない部分のみが対象になります。令和7年度税制改正により計算方法も見直されました。この記事では、改正内容を踏まえてわかりやすく解説します。
相続税の物納とは?どんな時に適用されるのか
相続税の物納とは?延納との違い
相続税は原則、期限までに金銭で一括納付することが求められます。
もし相続税の現金での一括納付が困難な場合は、まずは延納を検討し、最終手段として物納という順序で検討されることになります。
延納とは相続税額が10万円以上あり、金銭で納付することが困難な場合に、納税者が申請することで年賦の方法(年払い)で納付することが可能となる制度です。
この際、困難とする金額を限度として、延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること、期限までに書類を税務署長に提出することが必要となります。
一方、物納とは延納によっても金銭で納付することが困難な場合に限り、その困難な金額を限度として、一定の相続財産による納付が可能な制度です。
ただし、相続税額の全額を物納できるわけではなく、あくまでも金銭で納付できない部分に限られています。
手元に現金や換価しやすい財産がある場合、それらを優先的に納税に充てる必要があり、残りの部分の物納を検討できる仕組みです。
物納の場合も期限までに手続関係書類を税務署長に提出することが義務付けられています。
物納許可限度額とは
物納許可限度額とは、相続税を財産で納付する物納が認められる金額の上限のことです。
この金額は「納付すべき相続税額」から、「納期限まで又は納付すべき日に金銭で納付することが可能な金額」及び「延納によって納付することができる金額」を控除した金額の範囲内で認められます。(相続税法施行令17条)
次にその計算方法について詳しく解説します。
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相続税の物納できる金額は?計算方法と改正点
令和7年改正のポイント
令和7年度税制改正により、物納許可限度額の計算方法が見直されました。
新しい計算方法は令和7年4月1日以後の相続開始に係る申請分から適用されています。
令和7年度改正では、以下の点が見直されました。
- 申請者の平均余命年数を考慮
- 収入金額の減少が見込まれる場合の計算を明確化
- 延納終了後の生活費及び事業経費の加算
この改正により、申請者の年齢や将来の収入見込みがより実態に即して反映されるようになりました。
物納許可限度額の計算方法
物納許可限度額は以下の式で算出されます。
物納許可限度額 = ①納付すべき相続税額 − ②現金納付額 − ③延納によって納付することができる金額 + ⑩延納期間終了後の当面の生活費及び事業経費
【各項目の詳細】
①納付すべき相続税額
申告または更正・決定により確定した相続税額の総額です。
②現金納付額
納期限において有する現金・預貯金その他の換価が容易な財産の価額から、以下を差し引いた金額です。
・申請者及び生計を一にする配偶者その他の親族の3か月分の生活費
・申請者の事業継続のために当面(3か月分)必要な運転資金
生活費については、申請者本人は月額10万円、家族は1人あたり月額4万5,000円で計算されます。
③延納によって納付することができる金額
延納によって納付することができる金額の計算式は以下の通りです。
③延納によって納付することができる金額 = (④年間の納付資力 × ⑤収入金額が減少するまでの年数) + (⑥収入金額の減少後の年間の納付資力 × ⑦延納年数)+ ⑧臨時的収支 + ⑨延納許可限度額計算時に控除した額
④年間の納付資力 = 年間の収入見込額 − 申請者及び生計を一にする配偶者その他の親族の年間の生活費 − 申請者の事業の継続のために必要な年間の運転資金(経費等)の額
⑤収入金額が減少するまでの年数:収入金額の減少がない場合は「延納可能最⻑年数(注1)」または「平均余命年数(注2)」のいずれか短い年数を計算してください。 収入金額の減少後の計算を行う必要はありません。
⑥収入金額の減少後の年間の納付資力 = 減少後の年間収入見込額 − 申請者及び生計を一にする配偶者その他の親族の年間の生活費 − 減少後の年間収入見込額に対応する事業の継続のために必要な年間の運転資金(経費等)の額
⑦延納年数:延納可能最⻑年数または平均余命年数のいずれか短い年数から収入金額が減少するまでの年数を控除した年数
⑧臨時的収支:臨時的収支おおむね1年以内に見込まれる臨時的な収入から概ね1年以内に見込まれる臨時的な支出を差し引いた金額です。申請時点で確定している臨時的な収入(給付が確定している退職金など)のみを計上してください。
(注1) 延納可能最⻑年数の区分が2以上ある場合は、それぞれの区分の最⻑年数を当該区分に用いた課税相続財産の価額の割合であん分した年数を、合計した年数とします。
(注2) 納期限又は納付すべき日における、厚生労働省が公表する完全生命表に基づく平均余命年数とします。
(参考:物納許可限度額等の計算方法が変わりました)
相続税の物納が認められる財産の範囲
物納財産の優先順位
物納に充てることができる財産には明確な優先順位が定められています原則として相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産で、日本国内に所在するものとされています。
後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合、または先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。
【第1順位】
- 不動産(土地・建物)
- 船舶
- 国債証券・地方債証券
- 上場株式等
- 不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
【第2順位】
- 非上場株式等
- 非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
【第3順位】
- 動産
(参考:No.4214 相続税の物納|国税庁)
物納できない財産(管理処分不適格財産)
以下のような財産は物納に充てることができません。
- 担保権が設定されている不動産
- 権利の帰属について争いがある不動産
- 境界が明らかでない土地
- 隣接地との争訟がなければ通常の使用ができない不動産
- 公道に通じない土地で通行権の内容が明確でないもの
- 借地権者が不明な土地
- 耐用年数を経過した建物(通常使用できるものを除く)
- 管理・処分に過大な費用がかかる不動産
- 譲渡制限株式
- 質権等の担保権の目的となっている株式
(参考:No.4214 相続税の物納|国税庁)
物納劣後財産
以下の財産は他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納に充てることができます。
- 地上権、永小作権、地役権等が設定されている土地
- 法令違反で建築された建物とその敷地
- 現在、納税義務者が居住または事業に使用している建物とその敷地
- 建築基準法の道路に2メートル以上接していない土地
- 市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成できるものを除く)
- 農用地区域内の土地
- 保安林として指定された区域内の土地
(参考:No.4214 相続税の物納|国税庁)
相続税の物納申請時の注意点は?
相続税の物納を申請するには、金額を正しく算出すること、適切な書類を提出することが必要です。申請を検討している場合は、以下の点に注意しましょう。
申請期限の厳守
物納申請書と物納手続関係書類は、相続税の納期限または納付すべき日(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに提出する必要があります。この期限を過ぎると物納は認められません。
ただし、物納手続関係書類の準備が間に合わない場合は、物納手続関係書類提出期限延長届出書を提出することで、1回につき3か月を限度として、最長1年まで提出期限を延長できます。
審査期間と利子税
税務署長は物納申請期限から3か月以内に許可または却下を行います。
申請財産の状況によっては、最長9か月まで期間が延長される場合があります。
物納申請が行われた場合、物納の許可による納付があったものとされた日までの期間のうち、申請者において必要書類の訂正等または物納申請財産の収納に当たっての措置を行う期間について、利子税がかかります。
収納価額の問題
物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額(相続税評価額)となります。
相続税評価額は時価の7~8割程度であることが多いため、財産を売却して現金で納税する方が有利な場合もあります。
小規模宅地等の特例を適用した相続財産を物納する場合は、特例適用後の価額が収納価額となるため、さらに評価額が低くなります。
物納に伴う費用負担
物納に充てる財産の整備や必要書類の作成のための費用(登記関係費用、境界標の設置、測量費用など)および物納が許可されるまでの維持管理費用(固定資産税、建物の修繕費など)は、申請者自身の負担になります。
却下と再申請
物納申請した財産が管理処分不適格財産に該当すると判断されて却下された場合、却下の日の翌日から20日以内に、他の財産による物納の再申請を1回に限り行うことができます。
延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がないと判断されて却下された場合は、延納の申請に切り替えることも可能です。
条件付許可のリスク
汚染物質除去の履行義務などの条件を付されて物納の許可を受けた後に、許可財産に土壌汚染などの瑕疵があることが判明した場合、汚染の除去などの措置を求められます。
物納許可後5年以内にこの措置を求められ、措置ができない場合には、物納許可が取り消されることがあります。
相続税の物のに関するよくある質問(FAQ)
物納で相続税を全額支払えますか?
原則として相続税を全額物納で収めることはできません。
物納は現金や延納でも納付が困難な部分に限って認められる制度です。
相続税額の全額を物納できるケースは原則として想定されておらず、まずは金銭納付の可否が厳しく審査されます。
延納と物納はどちらが有利?
延納と物納のどちらが有利かは、財産の内容や収入状況、将来の資金計画によって異なります。
利子税の負担や不動産の評価額などを総合的に比較する必要があります。
相続税でお困りの場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
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まとめ
物納許可限度額は、相続税を財産で納付できる金額の上限であり、現金での納付が困難な金額に限られます。
令和7年度税制改正により計算方法が見直され、申請者の年齢や将来の収入見込みがより実態に即して反映されるようになりました。
物納を検討する際は要件を十分に理解し、申請期限を守ることが重要です。
また、相続税評価額での収納となるため、売却して現金納付する方が有利な場合もあります。
相続税の納付方法は複雑で専門的な判断が必要となるため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
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