株式会社設立時の資本金はいくらが妥当?平均額と設定のポイント
株式会社を設立する際に資本金は、会社の信用力や事業の安定性、融資や税務面に大きく関わる重要なポイントです。
最低1円から設立可能ですが、初期費用や運転資金、取引先や金融機関の評価も踏まえて適切に設定することが求められます。資本金の決め方を理解して円滑に会社設立を進めましょう。
株式会社の設立に必要な資本金
株式会社を設立する際に必要な資本金の目安や決め方をわかりやすく解説します。
資本金とは
資本金とは株式会社を設立する際の元手となる資金です。
会社の経営基盤や体力を示す重要な指標になります。
多くの場合、経営者の自己資金や株主・投資家からの出資で構成され、創業時は自己資金となるケースが多いです。
貸借対照表上では「株主資本」として扱われ、返済義務はありません。
そのため、資本金が多いほど、金融機関や取引先から財務的余力のある会社として認識されます。
資本金は最低1円から
以前は、株式会社を設立するには最低1,000万円、有限会社では300万円の資本金が必要でした。
2006年の新会社法施行により最低額規定は撤廃され、1円からでも会社を設立できるようになりました。
ただし、資本金1円で設立する場合は以下のリスクがあります。
- 初期費用や運転資金が不足し、資金ショートの可能性
- 金融機関から融資を受けにくい
- 取引先から信用されず契約が難しくなる
そのため株式会社設立時の資本金は、最低額だけでなく事業の運転資金や信用力を考慮して設定しましょう
資本金の平均額と一般的な水準
法務省統計局が実施した統計結果によると、株式会社の資本金額として最も多いのは100万円~300万円で全体の39.2%を占めています。
次いで500万円~1000万円が23.0%、100万円未満が18.3%となっています。
初期投資が比較的少ない業種であれば、この範囲内で設定する企業が多い傾向にあります。
(参考:登記統計 商業・法人登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額)
関連する記事:会社設立でよくある資本金仕訳の間違いと正しい処理方法を解説
株式会社設立時の資本金はどう決めるべき?
株式会社設立時の資本金の設定額は。複数の要素を総合的に考慮して決定する必要があります。
初期費用と運転資金を算出する
資本金を決めるために、まず株式会社の設立にかかる初期費用と事業が軌道に乗るまでの運転資金を合算する方法があります。
多くのケースでは、以下の費用を資本金でカバーできるように設定します。
初期費用の例:
- 会社設立の法定費用(登録免許税、定款認証手数料など)
- オフィスや店舗の賃貸契約費用(敷金・礼金・前家賃)
- 設備・備品の購入費用
- ホームページ制作費用
- 初期在庫の仕入費用
運転資金の例:
- オフィス・店舗の賃料
- 従業員の給与
- 光熱費や通信費
- 広告宣伝費
- 仕入費用
一般的には、初期費用に加えて3ヶ月~6ヶ月分の運転資金を確保できる金額を資本金として設定することが推奨されています。
創業初期は売上が安定せず収入がない期間も想定されるため、この期間を乗り切るための資金を確保しておきましょう。
取引先の信用度を担保する
資本金は登記簿謄本(登記事項証明書)に記載される、株式会社の信用度を測る指標の一つとして活用される情報です。
あまりにも少額だと「事業を継続する体力がない」と判断されてしまう可能性があります。
企業間取引では、新規取引先に対して与信調査を実施するのが一般的です。
大手企業や公共機関と取引する予定がある場合は、ある程度の資本金を設定しておく必要があります。
融資審査を考慮する
株式会社設立後に金融機関から融資を受けることを検討している場合、資本金の額は審査において重要な判断材料です。
一般的に融資可能額は資本金の1倍~2倍程度が相場とされています。
資本金が極端に少ない場合、返済能力が低いと判断され融資審査が不利になる可能性があります。
許認可の要件を確認する
業種によっては、事業を行うために行政機関からの許認可が必要です。
許認可の要件の中に資本金額の条件が含まれている場合があり、要件を満たさないと事業を開始できません。
資本金が許認可の要件に含まれる主な業種:
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業種 |
最低資本金 |
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一般建設業 |
500万円以上 |
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特定建設業 |
2,000万円以上 |
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貨物利用運送業 |
300万円以上 |
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有料職業紹介業 |
500万円以上(×事業所数) |
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労働者派遣業 |
2,000万円以上(×事業所数) |
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第1種旅行業 |
3,000万円 |
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第2種旅行業 |
700万円 |
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第3種旅行業 |
300万円 |
許認可が必要な業種で起業する場合は、資本金を決定する前に必ず要件を確認しましょう。
助成金・補助金の要件を確認する
国や自治体が提供する助成金・補助金の中には、資本金額を申請要件としているものがあります。
例えば、小売業事業者が「デジタル化・AI導入補助金 (旧:IT導入補助金)」を利用する場合「資本金5,000万円以下、従業員50人以下」の要件があります。
利用を検討している助成金・補助金がある場合は、資本金に関する要件を事前に確認し、その条件内で資本金を設定することが重要です。
(参考:デジタル化・AI導入補助金2026|申請の対象となる方)
税金にも影響?資本金を決める上での注意点
株式会社の資本金を設定する際には、税金面での影響も十分に考慮する必要があります。資本金額によって納税義務の有無や税額が変わるため、適切な金額設定が重要です。
消費税の免除措置を活用する場合
資本金が1,000万円未満で設立された会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。
ただし、2期目については「特定期間(1期目の期首から6ヶ月間)」の売上高および給与等支払額がともに1,000万円を超えた場合に限り、2期目から課税対象となります。
資本金が1,000万円以上の場合、設立初年度から消費税の納税義務が発生するため、この点を考慮して資本金額を設定する必要があります。
消費税の軽減措置を受けたい場合は、資本金を999万円以下に設定することが一般的です。
関連する記事:特定新規設立法人は消費税が免除されない?判定要件について解説
法人住民税の均等割を確認する
株式会社設立時の資本金は、法人住民税の「均等割」にも影響します。均等割は最低限納める税金で、資本金額で変動します。
例:大阪府堺市で従業員50人以下の株式会社の場合
- 資本金1,000万円以下:50,000円
- 資本金1,000万円超1億円以下:156,000円〜160,000円程度
※均等割の金額は 自治体ごとに異なるため、他自治体とは金額が違う可能性があります。
(参考:令和5年度堺市税の税率)
資本金を決める際は、この税負担も考慮して設定することが、株式会社設立に必要な資本金の判断材料となります。
法人税の軽減税率の適用条件を確認する
資本金が1億円以下の中小企業は、法人税の軽減税率が適用されます。
2026年現在、資本金1億円以下で年間所得800万円以下の部分には15%の税率(一部の適用除外事業者は19%)が適用されます。
資本金が1億円を超えると中小企業とみなされず、軽減税率が適用されなくなります。
登録免許税を考慮する
株式会社を設立する際に必要な登録免許税は、資本金の額によって変動します。
- 資本金2,140万円以下:一律15万円
- 資本金2,140万円超:資本金×0.7%
つまり、資本金が大きいほど設立時の費用が増加します。
借入や振込の手続きも含め、株式会社設立時の資本金は税負担とのバランスを考えて設定することが重要です。
資本金増資にかかるコストと手間も
資本金は株式会社設立後も増資によって増やすことができますが、増資には手続きとコストが伴います。
増資には株主総会の決議や法務局への登記申請が必要で、増資額の0.7%(最低3万円)の登録免許税が課税されます。
また、第三者に新株を発行して増資を行う場合、経営者の持株比率が下がり、経営権に影響を与える可能性もあります。
そのため、「資金が足りなくなったら増資すればいい」という安易な考え方ではなく、会社設立時に適切な資本金額を設定することが重要です。
見せ金には注意
資本金を大きく見せるために金融機関や知人から一時的に借りた資金を資本金として計上し、登記後すぐに返済する行為は「見せ金」と呼ばれ、違法です。
見せ金は第三者を欺く行為として罪に問われる可能性があるため、絶対に行わないようにしましょう。
まとめ
株式会社の設立における資本金は、事業の継続性や信用力に影響する重要な要素です。
最低1円から設立可能ですが、取引先や金融機関からの評価、税務上の負担など総合的に考慮する必要があります。
もし資本金の判断に迷う場合は、専門家に相談するとよいでしょう。
当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。
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