合同会社で社員が死亡した場合はどうするべき?手続きや持分の扱い
合同会社を経営されている方や出資者の方にとって、社員の死亡は突然訪れる可能性があります。その際、どのような手続きが必要になるのか、持分はどうなるのか、事前に知っておくことが重要です。本記事では、合同会社の社員が亡くなった際の扱いや必要な手続きについて、会社法の規定に基づいて詳しく解説します。
合同会社における「社員」とは
合同会社における社員とは、会社に出資をした出資者のことを指します。
株式会社でいう「株主」に近い立ち位置にあたります。
ただし、合同会社は所有と経営の一致の前提があるため、原則として社員は会社経営に参加する権利と義務があります。
また合同会社の社員には、以下の3つの立場があります。
- 代表社員:会社を代表する社員
- 業務執行社員:会社の業務を執行する権限を持つ社員
- 非業務執行社員:出資はしているが業務執行には関与しない社員
そのため、社員の死亡は会社の経営に直接的な影響を与える重大な事態となります。
株式会社の違いについては、以下の記事をご参照ください。
合同会社(LLC)のメリット6選|株式会社との違いも徹底比較 – 川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所
合同会社で社員が死亡した際の扱い
合同会社の社員が死亡した場合、持分が相続されるのか、会社は存続できるのかなど、株式会社とは異なる独自のルールが適用されます。
原則として持分は相続されない
合同会社の社員が死亡した場合、会社法では「法定退社事由」として扱われます(会社法第607条第1項第3号)。
つまり特段の定めがない限り、死亡によって自動的に退社扱いとなります。
株式会社の株式は相続財産として相続人に承継されますが、合同会社では原則として持分は相続の対象になりません。
その代わり社員が死亡した場合、その出資の種類を問わず持分の払戻しを受けることができます(会社法第611条)。
持分の払戻しを請求する権利を持分払戻請求権と呼びます。
また、あらかじめ定款で決めておけば相続人などが持分を引き継ぐことが可能です。
定款に規定がある場合は持分を相続できる
定款に以下のような持分継承に関する規定がある場合は、相続人が社員の持分を承継することが可能です。
「社員が死亡した場合、その相続人が持分を承継して社員になることができる」
この場合、相続人は社員として合同会社に加入することになります。
ただし、相続人が2人以上いる場合の取り扱いについては注意が必要です。
相続人が2人以上いる場合、その持分について権利を行使する代表者を1人決めない限り、
原則として権利行使はできません。
その後、遺産分割協議や持分譲渡によって、実際に経営に携わる社員を定めることになります。
社員が1名しかいない合同会社は?
社員が1名しかいない合同会社において、その唯一の社員が死亡した場合について説明します。
定款の持分承継規定がない場合「社員が欠けたこと」に相当するため、合同会社は解散することになります(会社法第641条第4号)。
この場合は会社継続ができない解散とされているため、清算手続きに入らざるを得ません(会社法第644条第1項)。
合同会社で社員が死亡した際に必要な手続き
合同会社の社員が死亡した際に、必要な手続きをステップごとに解説します。
定款で持分承継を定めている場合の手続き
ステップ① 定款の確認
まず最初に行うべきは、定款の確認です。
前述のとおり、定款に持分承継規定があるかないかで、その後の手続きが大きく異なります。
ステップ② 相続人の確認
次に相続人の確認を行います。
死亡した社員の権利(持分払戻請求権)は遺産分割の対象となるため、相続人を確定させる必要があります。
相続人が複数いる場合は、後の手続きでそれぞれの意思確認や合意形成が必要です。
もし相続人が社員としての責任を負いたくない場合は、定款に承継規定があったとしても、承継を拒否して持分の払戻しを求めることが可能です。
この場合、相続放棄や遺産分割協議での調整が必要になります
ステップ③:変更登記の申請
死亡した社員が業務執行社員または代表社員であった場合は、その変更が生じた日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります(会社法第915条)。
定款で持分承継を定めていない場合の手続き
ステップ① 定款の確認
原則として、定款に規定がない場合は亡くなった社員の持分(地位)は相続できません。
もしも地位を継承したい場合は、相続ではなく定款に従った入社の手続きをする必要があります。
ステップ②:持分払戻しの確認
持分の払戻しを受ける場合、持分の払戻額を計算します。
持分の払戻しとして支出する額が剰余金額を超える場合は、債権者保護手続きが必要です。
ステップ③:変更登記の申請
前述と同様に、業務執行社員または代表社員が退社した際は、その変更が生じた日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります(会社法第915条)。
一人合同会社で解散となる場合の手続き
定款に持分承継規定がなく、一人合同会社の唯一の社員が死亡して解散となる場合は、清算手続きが必要です。
合同会社を清算する場合、1人または2人の精算人を置かなければいけません。
しかし、一人合同会社は精算人となる者がいないため、利害関係人の申立てにより、裁判所が清算人を選任する必要があります(会社法第647条)。
合同会社で社員が死亡した場合、手続きが煩雑になるため専門家に相談することをお勧めします。
持分の払戻し額の評価と必要な手続き
定款に持分承継の規定がない場合、持分の払戻しを受けることができます。その評価方法について説明します。
持分払戻請求権の評価
持分の払戻額は、退社時における合同会社の財産の状況に従って計算されます(会社法第611条第2項)。
具体的には、退社時点の会社の純資産額に、当該社員の出資割合(持分割合)を乗じた金額が払戻額となります。
そのため、必ずしも出資した金額が戻ってくるわけではありません。
持分については、以下の記事をご参照ください。
持分会社とは?会社設立を検討している人のための基礎知識 – 川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所
債権者保護手続きが必要な場合
持分を払い戻す際、会社から多額の資金が出ていくと債権者が困るため、一定の制限がかかります。
【剰余金を超える払戻しの制限:会社法 第635条 第1項】
持分会社は、社員の退社に伴う持分の払戻しとして支出する額が、当該払戻しをする日における剰余金額を超える場合には、当該支出について、債権者が異議を述べることができる旨を公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。」
これにより剰余金額を超える場合は、債権者保護手続きが必要になります。
また、債権者が異議を述べる期間として、少なくとも1ヶ月以上を確保しなければなりません(会社法第635条第3項)。
まとめ
合同会社の社員が死亡した場合、定款の有無によって持分の扱いや会社の存続可否、必要な手続きが大きく異なります。
対応を誤ると、想定外の資金流出や解散に至ることもあります。円滑な手続きと将来のリスク回避のためにも、早めに専門家へ相談することが重要です。
当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。



