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特定新規設立法人は消費税が免除されない?判定要件について解説

特定新規設立法人とは、資本金1,000万円未満で設立しても、支配関係や親会社の売上規模によって初年度から消費税の免税が認められない法人を指します。新設法人の免税ルールに加え、支配権や売上規模の要件に当てはまると課税事業者となるため注意が必要です。本記事では、特定新規設立法人の概要から判定要件、注意点を解説します。

特定新規設立法人とは?なぜ消費税が免除されない?

特定新規設立法人とは、新たに設立された法人のうち、資本金が1,000万円未満であっても、設立初年度から消費税の納税義務が免除されない法人を指します。

特定新規設立法人に該当すると基準期間がない課税期間において、納税義務が免除されないことになります。

 

新たに設立された法人は、設立当初1〜2期(事業年度)は、消費税の納税義務が免除される「免税事業者」となるのが一般的です。

しかし、特定新規設立法人に該当すると「免税の特例」が適用されず、設立第1期目から消費税の納税義務が生じる可能性があります。

場合によっては「簡易課税制度」の適用が制限されるなどの制約が生じます。  

 

これは「大きな売上を持つ親会社が子会社を設立し、子会社を免税にしてコストを抑える」などといった構造を防ぐための制度です。  

 

特定新規設立法人の判定要件 

特定新規設立法人の判定には、以下(1)特定要件と(2)売上規模要件の両方を満たした場合に該当します。

(1)特定要件:他の者による支配権が特定要件に該当すること

特定新規設立法人は「他の者による支配」があるかどうかで判定します。

新規設立法人の事業年度開始日に、他の者が株式や出資の50%超を直接または間接的に保有している場合、特定要件に該当します。

 

ここでいう「他の者」とは、法人だけでなく個人も含まれます。

個人の場合は、親族まで含めて支配状況を判定する点が特徴です。

 

親族の範囲は以下のとおりです。

  • 他の者の親族
  • 他の者と婚姻の届出を提出していないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  • 他の者(個人の場合に限る)の使用人
  • 上記に記載する者以外の者で他の者から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの(個人の場合に限る)
  • 上記に記載する者と生計を一にするこれらの者の親族

(参考:国税庁:特定新規設立法人の納税義務免除の特例(特定要件の判定)

 

例えば、個人Aが単独で株式を50%超保有しているケースだけでなく、個人Aとその配偶者がそれぞれ30%ずつ出資しているような場合(合計60%)も、親族単位で判断されるため特定要件に該当します。

 

また、間接的な株式の保有やグループ全体の関係性も考慮されます。

法人が株式を保有している場合はその法人が100%支配する子会社や、同一グループ企業の保有分も合算されます。

他の法人を完全支配している場合とは、次のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 他の法人の発行済株式等の全部を有する場合
  • 他の法人の一定の議決権につき、その総数の全部を有する場合
  • 他の法人の株主等(持分会社の社員に限る)の全部を占める場合

(参考:国税庁:特定新規設立法人の納税義務免除の特例(特定要件の判定)

 

例えば、親会社が100%出資する子会社が新設法人の株式を持っていると、その子会社を通じて親会社が支配しているとみなされる仕組みです。

 

これらの判定基準により、形式的に持株比率を分散させても、実質的に同一人物や同一グループが支配していると判断されれば特定要件に該当します。

 

(2)売上規模要件:基準期間相当の課税売上高が5億円を超えている

「他の者」または「特殊関係法人」の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超えていることが要件となります。

これが売上規模要件です。  

 

「特殊関係法人」とは、他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者を指します。

例えば、親会社が100%支配する子会社、同一グループ内で50%超の株式を相互に保有する関連会社、代表者個人が実質的に経営を支配している法人などです。

これらの「他の者」および「特殊関係法人」のことを判定対象者といいます。

 

また基準期間相当期間とは、通常新設法人の基準期間がない事業年度開始の日の2年前の前日から1年をさかのぼった期間と定められており、その期間の売上高(課税売上高)を基に判定します。  

 

なお、2024年(令和6年)10月1日以降に開始する課税期間からは、判定対象者の「売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額」が、国外収入を含めて 50億円を超える場合も要件に含まれています。

 

新しく設立した法人の消費税が免税となる理由

基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税が免除されます。

 

基準期間とは、個人事業主では「前々年」、法人では「前々事業年度」を指します。

これが1年未満の場合は、その事業年度開始日の2年前の前日から以降1年間に開始した各事業年度を合わせた期間になります。

 

新しく設立した法人の1期目および2期目は基準期間がないので、1期目および2期目は消費税の納税義務が免除されます。

 

資本金1000万円未満でも免税されない?注意点まとめ

法人設立時の資本金1000万円未満でも消費税が免除されない場合もあります。

 

期首時点の資本金が1,000万円以上になってしまった法人を「新設法人」といいます。

「新設法人」に該当した場合、消費税の納税義務が課されます。

例えば、資本金800万円で設立した後に1期目の途中で増資して1,000万円を超えると、設立2期目は課税事業者となります。

 

基準期間が1,000万円以下でも消費税の納税義務が免除されない例外がいくつかあります。

以下に該当すると課税事業者になる場合があるので注意が必要です。

  • インボイス登録事業者である
  • 特定期間における課税売上高が1000万円超える場合(設立2期目)
  • すでに課税事業者選択届を提出している
  • 合併・分割に伴う特例が適用される
  • 特定新規設立法人に該当する

(参考:国税庁:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例

 

さらに、調整対象固定資産(1取引100万円以上の建物・設備など)を取得し、その課税期間を一般課税で申告すると、取得から3年間は免税事業者になれません。

また、この期間は簡易課税制度の選択もできないため注意しましょう。

 

新設法人または特定新規設立法人に該当する場合は、所轄税務署へ届出書の提出が必要です。

 

まとめ

新設法人は通常1〜2期目が免税ですが、支配関係やグループの売上規模により「特定新規設立法人」と判定されると初年度から課税事業者となります。資本金や持株構成、親会社の売上などで免税が外れるケースも多いため、設立前に要件を確認し、不要な課税リスクを避けることが重要です。

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