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税務調査で領収書がない場合の対処法は?何年前までの帳簿が必要?

税務調査の通知が届いたとき、「領収書がない」と焦る方も多いでしょう。もし、領収書がなくても支払いの事実を示せば経費として認められるケースもあります。本記事では、税務調査で領収書を紛失してしまった時の対処法から、調査で見られるポイントまでをわかりやすく解説します。税務関連書類の管理に、ぜひお役立てください。

税務調査は何年前まで遡って調査される?

税務署は、過去の申告内容を確認し、申告漏れや不正がないかを調べます。

そのため、帳簿書類の保存期間と調査可能期間を理解しておきましょう。

必要な帳簿・領収書の保存期間は原則7年

国税庁の規定では、帳簿書類の保存期間は税目や書類の種類によって異なり、法人税・所得税(青色申告の法定帳簿など)ともに「申告期限の翌日から原則7年間」と定められています。

ただし、個人事業主(所得税)の一部書類は5年間となる場合や、法人の場合は10年間の保存が必要となるケースもあります。

(参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

 

遡及期間

法律上の根拠  

実務上の主なケース 

3年

実務上の目安 

多くのケースで最初の調査対象とされる期間

軽微な誤りなどのケース

5年

原則 

申告内容に誤りや申告漏れ、無申告のケース

7年

不正行為があった場合

故意の隠蔽、架空経費など脱税行為が疑われるケース

 

特に7年遡るケースは「重加算税」が課されるような悪質な事例に限定されます。

過去の領収書がないとどうなる?

消費税の仕入税額控除を受けるためには、請求書及び領収書の保存が必須です。

この請求書には、適格請求書、適格簡易請求書の他、仕入明細書などが含まれます。

領収書がない場合、所得税では支払いの事実を証明できれば経費として認められますが、消費税の税額控除は適用されません。

 

税務調査で領収書がないときの対処法

税務調査では、支出の事実を客観的に証明できる資料が求められます。

領収書がない場合でも、適切な対応を取ることで経費として認められる場合があります。

領収書の再発行を依頼する

最も確実な方法は、取引先に領収書の再発行を依頼することです。

依頼の際は、支払い日・金額・取引内容などの詳細を正確に伝えなくてはいけません。

電子領収書やメールでの発行にも対応してもらえる場合があるため、紙にこだわらず柔軟に依頼しましょう。

ただし、再発行を繰り返すと管理体制の甘さを疑われたり、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性もあります。

再発行してもらえた場合は、発行依頼時のメールや請求書なども一緒に保管しておくと、支払いの経緯を裏付ける証拠として有効です。

再発行が難しい場合の代替手段について、次の項で詳しく説明します。

領収書の代用書類を準備する

領収書の再発行が難しい場合は、請求書や支払い明細書などの代用資料を提出できます。

支払いの事実の客観性を証明できる書類を準備しましょう。

たとえば、次のような書類が代替資料として有効です。

  • クレジットカードの利用明細
  • 銀行振込明細・通帳コピー
  • メールでの支払確認メッセージ

出金伝票を作成する

また、現金払いで領収書がない場合は、出金伝票を作成するのも方法の一つです。

出金伝票を作成する際は、次の内容を明記します。

  • 支払日
  • 支払先名
  • 支払金額
  • 支払い内容(何に使ったか)
  • 支払い理由
  • 担当者の署名

 

自社で作成した出金伝票は客観性が乏しい点に注意しなくてはいけません。

税務調査では単独の証拠としては弱い可能性があるため、請求書や見積書、メールでのやり取りなど、セットで管理しておくと安心です。

また、記載内容は正確に記入し、上司や承認者のチェック印を付けるなど信頼性を高める工夫をしましょう。

 

領収書の代わりになる書類一覧

税務調査では、領収書だけが証拠とは限りません。

電子データや金融機関の取引記録など、支払いの痕跡が明確に分かる書類も認められます。

領収書の代用書類も、経費は分けて管理しておくと後で確認しやすくなります。

電子決済の記録

  • クレジットカード利用明細書
  • 電子マネー・QRコード決済履歴 (PayPay、楽天ペイなど)
  • 決済完了メール・スクリーンショット
  • オンライン明細のPDF保存

 

これらの電子決済書類は、第三者であるカード会社などが発行するため、税務署でも有効な証拠として認められています。

ただし、電子マネーやQRコード決済の履歴だけでは、購入した商品・サービスの内容(事業関連性)が不明確な場合があります。

利用時のレシートや、取引内容が記載されたメールなどを併せて保管しておきましょう。

銀行取引の記録

  • 銀行振込明細
  • 通帳のコピー
  • 振込依頼書の控え
  • インターネットバンキングの取引履歴

振込記録があれば、支払先・日付・金額が明確に残るため、領収書の代替資料として非常に有効です。

経費の種類ごとに分けて管理することで、調査時に探しやすくなります。

取引を証明する書類

  • 契約書・注文書・納品書
  • 見積書・請求書・支払通知書
  • 取引先からの入金確認メール

これらの書類は、支払いが行われた取引が「実際に行われたこと」の証明になります。

特に、請求書と納品書はセットで保管するのがおすすめです。

時系列で整理して提出できれば、取引の実態を客観的に説明できます。

支払い証明書や伝票

  • 出金伝票
  • 支払証明書(第三者の確認印があるとより有効)
  • 経費精算書

特に中小企業や個人事業主では、自社作成書類の信頼性を高める工夫が大切です。 

支払先や日付、内容の客観性が最も重要となります。

社内の承認印や担当者の署名(または社印)を押すことで、その支出が社内で適切に処理された証拠となり、調査官の印象を大きく変えるケースもあります。

 

税務調査で見られるポイント

税務調査では、単に「領収書があるかないか」だけで判断されるわけではありません。

調査官が重視するのは、経費全体の整合性・一貫性・合理性です。

帳簿や証拠資料に不自然な点がないか、支出が事業に関係しているかなど、経理処理の信頼性を細かくチェックされます。

領収書がない場合でも、代わりとなる証拠を示し、支出の正当性を説明できるかどうかが重要なポイントです。

経費の整合性と帳簿の一致

最初に確認されるのが、帳簿と領収書の金額・日付の一致です。

例えば、帳簿上の支出額と領収書の金額が異なっていたり、記載日がずれていたりすると、記帳の信頼性が疑われます。

調査官は「経理担当者の記録精度」や「日常の管理体制」をここで見ています。

日々の仕訳を正確に行い、支払伝票・請求書などの関連書類を一緒に保管しておくことが大切です。

取引先の実在性・支出の正当性

次に確認されるのは、取引先が実在するかどうかです。

実体のない会社や、知人・家族との取引が多い場合は「架空経費」と疑われるリスクがあります。

また、支出が本当に事業のためだったのか、私的利用が混ざっていないかも厳しく見られるポイントです。

たとえば、飲食費や交際費、旅費交通費などは事業関連の説明が必要となります。

打ち合わせ記録やスケジュール帳、メール履歴など、支出の目的が明確になる資料を添えると安心です。

支出のバランスと資金の流れ

さらに、高額な支出や現金払いの多さも注目されます。

大きな支払いが多いにもかかわらず裏付け資料が乏しい場合、資金の流れが不透明と判断される可能性があります。

現金取引が多い場合は、出金伝票や支払い記録を必ず残し、支出の内容と目的を明確にしておくことが重要です。

 

税務調査を受けないための対策

税務調査は、不整合な帳簿や不自然な経費の増減など、疑わしい点がある場合に実施されることが多いです。

調査を避けるためには、日頃から正確な記帳と書類管理をしなくてはいけません。

経費は支出後すぐに記録し、領収書・請求書・明細書を月ごとに整理しておきましょう。

紙の領収書は劣化や紛失のリスクがあるため、電子領収書やPDFデータとしてクラウドに保存しておくのもおすすめです。

また、領収書がないと気づいたときの早めの対処が、税務調査のリスクを抑えることに繋がります。

もし自社で管理できない際は、専門家への依頼がおすすめです。

 

まとめ

税務調査で領収書がなくても、支払いの事実を証明できる書類があれば経費として認められる可能性があります。日頃から請求書や銀行明細、カード利用明細などを組み合わせて保管することが重要です。再発行依頼や電子保存の仕組みを整えておけば、調査時にも慌てず対応できます。日常的な管理を徹底し、信頼される経理体制を整えましょう。

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