贈与証明書と贈与契約書の違いを徹底解説|相続・税務で役立つ知識
贈与証明書と贈与契約書の違いは何か、疑問に感じる方は多いでしょう。どちらも将来の相続や税務調査に大きく影響する可能性がある書面です。実は両者には法律的に大きな違いはなく、いずれも「贈与の合意を証明する書面」として活用されます。本記事では、贈与証明書と贈与契約書の違いや作成の注意点、活用メリットをわかりやすく解説します。
贈与証明書と贈与契約書に大きな違いはない
そもそも、なぜ贈与証明書を作成する必要があるのでしょうか?その役割を解説した上で、贈与契約書との違いについて説明します。
贈与証明書はなぜ必要?
贈与証明書とは、贈与契約が当事者間の合意に基づいて成立したことを証明するための書面です。
民法上、贈与は「財産をあげる人」と「受け取る人」の双方の意思が一致して初めて効力を持ちます。
一方的に財産を与える意思表示をしただけでは契約は成立せず、必ず双方の合意が必要です。
その合意を証拠として残す契約書であり、将来のトラブル防止や贈与税の手続きにおいて重要な役割を果たします。
贈与契約書・贈与証明書・贈与証書の違いとは
贈与契約書と贈与証明書、贈与証書には、法律的に大きな違いはありません。
いずれも「贈与の合意を示す書面」という点で同じ目的を持ち、単に呼び方が異なるに過ぎません。
ただし実務上は、贈与契約書は贈与を行う段階で契約内容を明確化するために作成されることが多いです。
一方、贈与証書や贈与証明書は、贈与が完了した事実を後から証明する用途で利用される場合があります。
贈与証明書にひな形はある?
贈与証明書には、法律で統一された形式やひな形はありませんが、最低限記載すべき事項があります。
これらを明記することで、後日の相続や税務調査において贈与の事実を明確に示せます。
- 贈与契約日
- 実際に贈与した日付
- 贈与する財産の金額・種類・数量などの情報
- 贈与方法
- 贈与者と受諾者の住所氏名
また、贈与証明書自体は手書きでもパソコン作成でも有効です。
署名や日付を直筆で記入し、実印を押すことで信頼性や証拠力が一層高まります。
贈与証明書を作成するメリット
贈与証明書を作成するメリットは以下の通りです。
遺産相続のトラブルを防ぐ
贈与証明書の作成は、相続時のトラブル防止につながります。
将来の遺産分割において「本当に贈与があったのか」という他の相続人からの疑念を防ぐ効果があります。
証書には具体的な贈与額や贈与日が明記されるため、相続人全員が事実を確認しやすくなるからです。
結果として、円満かつスムーズな遺産分割の助けとなります。
税務調査のリスク回避になる
贈与証明書は、税務調査時に贈与が実際に行われたという証拠となる書面です。
もしも、贈与額が高額な場合、相続税や贈与税の調査のリスクがあります。
贈与証明書がなければ、税務署から「名義預金」や「借入金」と判断され、場合によっては、相続税の追徴課税や延滞税が発生するリスクもあります。
税務リスク回避のためにも、贈与証明書を事前に残しておくとよいでしょう。
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贈与を確実に履行させる
贈与証明書は、契約の強制力を持つため、一方的に取り消すことはできません。
民法第550条では、書面によらない贈与契約は各当事者が自由に解除できるとされています。
つまり、口約束だけでは贈与が無効になる可能性があります。
この証明書は、受贈者が安心して財産を受け取れる環境を整えることに繋がります。
不動産登記を円滑に進められる
不動産を贈与する場合には、必ず所有権移転登記が必要です。
その際に贈与証明書があることで、登記申請書類の証拠として活用できます。
そのため、不動産登記の手続きをスムーズに進められます。
契約書がなければ、贈与の事実を証明する追加資料を求められる場合もあり、手続きが煩雑になることがあります。
不動産の贈与を検討している際は、贈与証明書を備えておくとよいでしょう。
贈与証明書を作成する際の注意点
贈与証明書には法律的に統一された形式はありませんが、民法上の制約が存在します。
作成手順を誤ると、契約が無効になってしまう可能性もあるので、作成する際は次のような点に注意しましょう。
未成年者との契約には法定代理人が必要
贈与契約において受贈者(財産を受け取る人)が未成年者(18歳未満)の場合、単独で契約を結ぶことはできません。
民法上、未成年者は法律行為を行う際に法定代理人の同意が必要となります。
そのため、贈与証明書には受贈者本人の署名・捺印に加え、通常は親権者である両親の署名・捺印も求められます。
これを怠ると契約が無効となる可能性があるため注意が必要です。
双方の意思決定能力がないと契約は無効
贈与契約は当事者双方の意思表示によって成立します。
そのため、認知症や精神疾患などにより贈与者(財産を挙げる人)が十分な判断能力を欠いている場合、有効な契約とは認められません。
後々、契約の有効性を巡って争いが起きることもあります。
贈与者の意思能力に不安があるときは、医師の診断書などを準備しておきましょう。
過去の贈与証明書の作成は禁物
贈与証明書は、過去の贈与をさかのぼって作成してはいけません。
この過去の日付に遡って贈与証明書を作成することを「バックデート(Back date)」と言います。
バックデートが税務調査で発覚した場合、単なる修正申告では済まない可能性もあります。
最悪、重加算税など厳しいペナルティが科される恐れがあるので、注意してください。
定期的な贈与は税負担のリスクあり
贈与証明書を作成していても、毎年同じ時期に同じ金額を繰り返し贈与している場合は注意が必要です。
税務署から「定期贈与」とみなされる可能性があります。
この場合、まとめて全額が贈与されたと同等の扱いを受けてしい、贈与税が大幅に増えてしまいます。
名義預金にみなされる可能性も
たとえ贈与証明書を作成しても、通帳やキャッシュカードを贈与者が管理し続けている場合は「名義預金」と判断されるリスクがあります。
これは形式上の名義だけを変えて実質的には贈与していないと見なされ、相続財産に含まれる恐れがあります。
受贈者自身が自由に預金を引き出し、運用・処分できる状態にしておきましょう。
関連する記事:名義預金は税務調査で発覚する?相続税への影響と対策方法について
贈与証明書に関するよくある質問(Q&A)
次に贈与証明書や贈与契約書に関する質問をまとめました。
贈与証明書に収入印紙は必要ですか?
金や株式などを対象とした贈与証明書には収入印紙を貼る必要はありません。
しかし、不動産の贈与証明書は印紙税法に基づき「不動産譲渡契約書」として課税対象とされるため、200円の収入印紙を貼付しなければなりません。
印紙の貼付を怠ると過怠税を課される可能性があるため、注意が必要です。
贈与証明書に実印は必要ですか?
贈与証明書の作成において、必ずしも実印が必要とされるわけではありません。
認印や署名のみでも契約自体は有効です。
ただし、将来的に相続人間の争いや税務調査が起こる可能性を考えると、証書の信頼性を高めるために実印を使用し、併せて印鑑証明書を添付しておくことが望ましいでしょう。
これにより、証拠力の強い証明書となります。
110万円以内の贈与であっても証明書は必要ですか?
贈与税には年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。
ただし、少額贈与であっても証明書を作成し証拠を残すことが重要です。
税務調査や将来の相続時にトラブルを避けるための備えになります。
さらに、令和5年度税制改正で「生前贈与加算」の対象期間が相続開始前3年から7年へ延長されました。
早期から計画的な贈与対策を行うことが、節税や円滑な相続に直結します。
(国税庁:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし)
まとめ
贈与契約書と贈与証明書は、いずれも贈与の事実を残すための書面であり、大きな違いはありません。贈与証明書を適切に作成しておくことで、遺産相続のトラブル防止や税務調査への備え、不動産登記の円滑化に役立ちます。これらの書面を正しく活用することが安心につながります。
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