川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所

海外取引の消費税はかかる?かからない?契約前に確認すべき条件とは

海外企業との取引であれば、すべて消費税がかからないと思っていませんか?実は、海外取引でも内容次第では消費税の課税対象になるケースがあります。本記事では、海外取引における消費税の基本的な考え方と、課税・非課税の分かれ目となるポイントをわかりやすく解説します。

海外取引に消費税はかかるのか?

結論から言うと、原則として輸出など国外取引は消費税はかかりません

これは、消費税が「国内で消費される商品やサービス」に対して課される、いわゆる内国消費税だからです。そのため、国外で消費される取引は消費税の課税対象外とされます。(参考:No.6210 国外取引|国税庁)

輸出取引において、以下の場合では消費税が免除されます。

 

・国内からの輸出取引として行われる資産の譲渡または貸付

・国内と国外との間の通信または郵便もしくは信書便

・非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡または貸付け

・非居住者に対する役務の提供

(参考:No.6551 輸出取引の免税|国税庁)

 

ただし、「海外企業との取引=全て消費税がかからない」というわけではありません。たとえ相手が海外企業であっても、取引内容によっては国内取引とみなされ、消費税の課税対象になる場合があります。

「国外取引」が消費税の対象にならない一方で、「国内取引」と「輸入取引」は消費税の課税対象です。事業者が国内と国外に渡って取引している場合は、その取引が「国内取引」か「国外取引」かの判定によって決まります。次に、これらの条件について詳しく説明します。

 

海外取引における消費税が課税となる条件

国内で行われる取引は、原則、消費税の課税対象となります。

次の要件を全て満たす取引が国内取引とみなされます。

 

①国内において行うもの(国内取引)であること

②事業者が事業として行うものであること

③対価を得て行うものであること

④資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること

(引用:消費税のあらまし(令和7年6月)|国税庁)

 

国内と国外に渡って取引している場合は、以下の判定基準をもとに「国内取引」か「国外取引」かを判定します。

判定基準|資産の譲渡または貸付けの場合

資産の譲渡・貸付があった場合は、その資産が取引時にどこにあったか(資産の所在地)で国内取引かどうかを判定します。

  • 国内に所在する資産 → 国内取引(課税対象)
  • 国外に所在する資産 → 国外取引(課税対象外)

なお、資産の譲渡とは、売買や交換等の契約により、資産の同一性を保持しつつ、他人に移転することです。また、資産の貸付けとは賃貸借や消費貸借等の契約により、資産を他の者に貸し付け、使用させる一切の行為を指します。(引用:消費税のあらまし(令和7年6月)|国税庁)

判定基準|役務の提供の場合

役務(サービス)の提供については、原則としてそのサービスが実際に提供された場所で課税判断します。

  • 国内で提供される役務 → 国内取引(課税対象)
  • 国外へ提供される役務 → 国外取引(課税対象外)

役務の提供とは、請負や委任、寄託などの契約に基づいたその他のサービスを提供することを指します。例えば、宿泊や飲食、広告、運送などです。また、税理士、公認会計士、作家などによる、その専門的知識、技能に基づく役務の提供もこれに含まれます。(参考:消費税のあらまし(令和7年6月)|国税庁)

判定基準|電気通信利用役務の特例

デジタル化の進展に伴い、電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線を介して行われる役務(電気通信利用役務)については、役務の提供を受ける者の住所等で国内取引かどうかを判定するとされています。

つまり、国内に住所等を有する者に提供する電気通信利用役務については、国内・国外いずれから提供を行っても課税対象となります。

また、国外事業者が行う「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、役務の提供を受ける者が消費税の課税事業者である場合、リバースチャージ方式が適用されます。電気通信利用役務の主な例としては、Google広告、Facebook広告などです。これは、役務の提供を受けた国内事業者が消費税の申告納税義務が課されます

 

輸入取引における消費税がかからない条件

輸入取引の場合、保税地域から取り寄せた外国貨物(輸入品)は課税対象になります。

保税地域とは、税関手続きが必要な貨物を法律の規制下で管理し、保管場所を制限する制度です。また、輸入品を蔵置し又は加工、製造、展示等をすることができる特定の場所のことです。

また、保税地域において外国貨物が消費され又は使用された場合には、その消費又は使用した者がその消費又は使用の時に外国貨物を保税地域から取り寄せたものとみなして課税されます。

この外国貨物を保税地域から輸入した事業者は、原則としてその引取りの時までに輸入申告書を提出し、消費税を納付しなければなりません。なお、外国貨物の引取りについても、別途地方消費税が課税されます。

しかし、以下のものについては非課税とされています。

  • 有価証券
  • 郵便切手類、印紙、証紙、物品切手等
  • 身体障害者物品
  • 教科用図書

 

海外取引に関する消費税対応と契約時の留意点

海外取引を行う際は、以下のポイントに留意して対応しましょう。

海外取引における必要な情報を契約書に明示

海外取引の契約書を作成する際は、役務の提供場所や資産の所在地、契約当事者の住所地などを明確に記載し、取引の情報をはっきりさせることが重要です。例えば「本サービスは国外で提供される」と明記すれば、国外取引であることが明確になります。

海外取引におけるインボイス制度対応

2023年10月に始まったインボイス制度は海外取引にも影響を及ぼします。海外事業者との取引では、相手が適格請求書発行事業者かを確認し、未登録であれば仕入税額控除が制限される可能性があります。また、リバースチャージ方式の適用有無も確認が必要です。

海外取引の消費税免税に必要な証明書類を保存

輸出免税の適用を受けるためには、輸出取引等である証明が必要です。取引の区分に応じて以下の書類を7年間保存する必要があります。

  • 輸出許可を受ける貨物:輸出許可書(税関長が証明した書類)
  • 郵便物として輸出(20万円超):輸出許可書(税関長が証明した書類)
  • 郵便物として輸出(20万円以下):日本郵便からの引受証明書類および発送伝票等
  • 役務の提供:契約書その他の書類で一定事項が記載されたもの

海外取引における準拠法と管轄の明確化

海外取引では、契約の解釈や適用にどの国の法律を用いるか(準拠法)、紛争時にどの裁判所や仲裁機関を利用するか(合意管轄)を明確に定めることで、税務処理を含むトラブル発生時の解決手段を事前に整えておくことができます。

海外取引に伴う為替変動・政治リスクへの配慮

海外取引では、為替の変動や政治体制の変化、関税・規制の変更などが取引条件や利益に影響を及ぼす可能性があるため、契約書にこれらのリスクへの対応策をあらかじめ明記しておくことが重要です。

 

まとめ

海外取引は原則として消費税の課税対象外ですが、取引の実態によっては国内取引と判定され、課税対象となる場合もあります。消費税の正確な取り扱いのためには、取引内容や提供場所を明確にし、契約時点で判断基準に基づいた確認が必要です。

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