川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所

なぜ財務指標は重要?正しい見方と重要な財務指標を徹底解説!

企業経営において、感覚や勘だけに頼った判断は大きなリスクを伴います。財務分析と財務指標を正しく理解・活用することで、経営状況を客観的に把握し、的確な意思決定が可能になります。本記事では、収益性・安全性・生産性・成長性の4つの視点から、財務指標の見方と使い方をわかりやすく解説します。

財務分析と財務指標とは?

財務分析とは、賃借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書といった財務諸表を多角的に分析し、企業の現状や課題を把握する方法です。

一方、財務指標とは、企業の財務状況や経営効率を数値で表現したものです。

財務指標は、単なる数字ではありません。

これらは企業の「健康診断書」とも言える重要な情報源で、投資家、債権者、取引先なども、これらの指標を基に企業の信頼性や将来性を判断できます。

経営者にとって財務指標はなぜ必要?

財務指標は経営者にとって意思決定を行う際の羅針盤の役割を果たします。次に、その重要性について解説します。

経営状況の客観的把握

財務指標は、企業の現状を数値で明確に示すため、感覚的な経営判断から脱却し、データに基づいた客観的な経営を可能にします。例えば、売上が増加していても利益率が低下している場合、財務指標によってその問題を早期に発見することが可能です。

ステークホルダーとのコミュニケーション

投資家や金融機関との対話において、財務指標は共通言語となります。特にROE(自己資本利益率)は、株主から預かった資本をどれだけ効率的に活用して利益を出しているかを示す重要な指標です。ROE(自己資本利益率)が10%以上であれば、投資価値がある優良企業として評価される傾向があり、資金調達や株価向上に直結します。

競合他社との比較分析

売上高営業利益率や自己資本比率、流動比率などを業界平均と比較することで、自社の強みや弱みが浮き彫りになります。たとえば同業他社に比べ利益率が低い場合、その原因を分析し改善することで、競争優位性を高める戦略を立てることが可能です。さらに業界平均と比較することで、改善すべき領域を特定し、戦略的な経営判断を下すことができます。

将来の業績予測と計画策定

財務指標の推移を分析することで、将来の業績予測や投資計画の策定に活用できます。売上成長率や利益成長率はもちろん、固定資産回転率や設備投資比率などの推移から、企業の成長性や安定性を定量的に評価できます。これにより、事業拡大や新規投資のタイミング、資金調達の適否などを論理的に判断することができます。

財務指標の見方

財務指標を正しく理解するためには、以下の点を押さえておきましょう。

時系列での変化を追跡 

財務指標は単年度の数値だけでは全体像をつかめません。過去10年分の推移を確認することで、売上や利益の成長性、財務の安定性、経営改善の成果などが明確になります。たとえば、利益率が年々向上していれば、コスト管理や事業戦略が機能している証拠。逆に数値が悪化傾向にあれば、早急な対策が必要です。変化の背景にある要因も併せて分析することが重要です。

業界平均との比較

業界によって、適正な各財務指標の水準は全く異なります。そのため、自社の数値を業界平均や主要競合他社と比較することで、自社の立ち位置や課題が明らかになります。競合よりも収益性が低い場合は、ビジネスモデルの見直しや効率改善などの戦略的判断が求められます。

複数指標との組み合わせ

財務状況を正確に把握するには、複数の指標を総合的に読み解く視点が必要です。例えば、自己資本比率と流動比率を合わせて見ることで、資金繰りや倒産リスクの判断が可能です。単一指標では見えないリスクや可能性を、指標間の関連性から発見することができます。

財務分析の4つの手法

財務分析は、企業の経営状況を多角的に評価するために、次の4つの分析手法を用います。

収益性分析

企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを評価します。主な指標にはROE、ROA、各種利益率があります。この分析により、企業の稼ぐ力を定量的に把握できます。

安全性分析

企業の財務構造の健全性や短期・長期的な支払い能力を評価します。自己資本比率、流動比率、当座比率などが代表的な指標です。倒産リスクの評価に重要な役割を果たします。

生産性分析(効率性分析)

企業が保有する資産や人的資源をどれだけ効率的に活用できているかを分析します。総資産回転率、棚卸資産回転率、労働生産性などが含まれます。

成長性分析

企業の将来性や拡大性を評価する分析です。売上成長率、利益成長率、資産成長率などを通じて、企業の発展可能性を測定します。長期的な投資判断に重要な指標群です。

 

重要な財務指標一覧

では、重要な財務指標の一覧を見ていきましょう。目安となる水準は、業種によって異なるため、企業ごとのビジネスモデルや市場特性を踏まえた上で、自社にとって適切な数値かどうかを判断しましょう。

収益性指標

売上高総利益率

  • 計算式:売上総利益 ÷ 売上高 × 100
  • 目安:業種により異なるが、20〜40%が一般的

 

売上高営業利益率

  • 計算式:営業利益 ÷ 売上高 × 100
  • 目安:5%〜10%以上で収益性が高い企業とされる

 

ROE(自己資本利益率)

  • 計算式:当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
  • 目安:10%以上が優良企業の基準

 

ROA(総資産利益率)

  • 計算式:当期純利益 ÷ 総資産 × 100
  • 目安:5%以上が好ましい

 

総資産回転率

  • 計算式:売上高 ÷ 総資産
  • 目安:1.0以上あれば効率的な資産運用ができているとされる

 

売上債権回転期間

  • 計算式:売上債権 ÷ 売上高 × 365(日)
  • 目安:30〜60日以内が望ましいとされている

 

損益分岐点比率

  • 計算式:損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
  • 目安:80%以下が安定経営の指標

安全性指標

流動比率

  • 計算式:流動資産 ÷ 流動負債 × 100
  • 目安:120%〜200%が望ましいとされており、業種によって変動

 

当座比率

  • 計算式:(流動資産 − 棚卸資産)÷ 流動負債 × 100
  • 目安:100%以上で十分な短期支払能力があるとされる

 

手元流動性比率

  • 計算式:現金及び現金同等物 ÷ 月商
  • 目安:1.5か月分以上が安心水準とされる

 

固定比率

  • 計算式:固定資産 ÷ 自己資本 × 100
  • 目安:100%以下が健全

 

固定長期適合率

  • 計算式:固定資産 ÷(自己資本+固定負債)× 100
  • 目安:100%以下が理想

 

負債比率

  • 計算式:負債 ÷ 自己資本 × 100
  • 目安:負債比率は100%を下回ることが望ましい

100%〜300%が標準水準で返済能力に問題がないとされる

 

自己資本比率

  • 計算式:自己資本 ÷ 総資本 × 100
  • 目安:30〜50%以上が望ましい

生産性(効率性)指標

付加価値額

  • 計算式:営業利益+減価償却費+人件費
  • 目安:業種によるが高いほど自社の価値創出力が高い

 

付加価値率

  • 計算式:付加価値額 ÷ 売上高 × 100
  • 目安:一般的に10〜20%程度だが、業種によって異なる

 

労働分配率

  • 計算式:人件費 ÷ 付加価値額 × 100
  • 目安:50〜60%が標準

 

労働生産性

  • 計算式:付加価値額 ÷ 従業員数
  • 目安:企業規模により異なる

 

一人あたり売上高

  • 計算式:売上高 ÷ 従業員数
  • 目安:全業種の中央値は3,850万円程度だが、業種によって変動

 

設備生産性

  • 計算式:付加価値額 ÷ 有形固定資産
  • 目安:高いほど設備を効率的に使えている

成長性指標

売上高成長率(増収率)

  • 計算式:(当期売上高 − 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100
  • 目安:5〜10%以上で成長企業と評価されやすい

 

経常利益成長率

  • 計算式:(当期経常利益 − 前期経常利益)÷ 前期経常利益 × 100
  • 目安:継続的にプラスであることが理想

 

総資本成長率

  • 計算式:(当期総資本 − 前期総資本)÷ 前期総資本 × 100
  • 目安:資本拡大のスピードと安定性のバランスが重要

 

よくある質問(FAQ)

ここでは財務指標に関するよくある質問に答えます。

財務指標のROEとROAの違いは何ですか?

ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)は、どちらも企業の収益性を測る重要な指標ですが、分析の視点が異なります。ROEは株主の観点から企業の収益性を評価する指標です。株主が投資した資金(自己資本)に対して、どれだけの利益を生み出したかを示します。一方、ROAは企業全体の資産運用効率を評価する指標です。借入金も含めた全ての資産を使って、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。

財務指標は意味がないと言われるのは何故ですか?

財務指標が「意味がない」と言われるのは、数値だけを鵜呑みにして経営判断を誤るケースがあるためです。業種や企業規模、成長段階によって適正値は異なり、単一指標だけでは全体像を把握できません。正しく活用するには、複数年分の推移や業界比較、指標同士の関連性を踏まえ総合的な分析をしましょう。

財務分析は何年分を分析すればよいですか?

一般的には、過去10年分の財務データを分析するのが望ましいとされています。短期的な変動だけでなく、中長期的な成長トレンドや経営改善の進捗、景気の影響を把握するためには、複数年のデータが必要です。

まとめ

財務分析と財務指標は、企業経営における意思決定や将来戦略の土台となる重要なツールです。正しい読み方と活用法を身につければ、経営の改善点や成長のヒントが見えてきます。当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。

 

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