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法人決算は自分でできる?自分で行うリスクと必要な知識について解説

法人決算とは、企業が一定期間の経営成績などをまとめ財政状況を把握するために行う作業です。「コスト削減のため決算書を自分で作成できないか」とお考えの方もいるのではないでしょうか?しかし、法人決算は個人の確定申告よりも複雑であり、必要となる書類や知識も多岐に渡ります。

この記事では、法人決算を自分で行うメリット・デメリット、自分で作成できるか判断する基準、法人決算に必要な知識について解説します。

法人決算を自分で行うメリット

結論、法人決算を自分で行うことは可能です。まずは決算と自分で行うと、どのようなメリットがあるのか解説します。

税理士費用の削減

法人決算を自分で行う最大のメリットは、税理士費用を節約できることです。税理士に法人決算を依頼する場合、決算のみでも一般的に15万円〜25万円程度かかります。年間顧問契約を結ぶと、さらに月額3万円〜10万円の費用が発生するため、年間で50万円以上のコストがかかることも珍しくありません。

 

会計知識や経営状況への理解度向上

法人決算を自ら行うことで得られるのは、単なるコスト削減だけではありません。会計や税務の実務を通じて、経営者として不可欠な「お金の流れ」への理解が深まります。

日々の仕訳から決算、税務申告に至るまでを自分で経験することで、「無駄な支出がないか」「資金繰りに影響を与えている項目はどれか」といった財務的な視点での経営判断力が自然と身についていきます。

また、このような知識は、将来的に新規事業の立ち上げ時の資金計画や投資判断との交渉などにも活かすことができます。外注に依存せず、自ら会計と向き合える経営者は、組織の舵取りにおいて大きな強みを持つことになるでしょう。

 

法人決算を自分で行うデメリット

法人決算を自分で行うメリットはありますが、様々なリスクもつきものです。デメリットを把握したうえで、自分で法人決算をするかどうか検討しましょう。

時間と労力の大幅な消費

法人決算書の作成には、膨大な時間と労力が必要です。特に、簿記や税務に不慣れな方にとっては、業務の流れを把握しながら進める必要があるため、作業に数日から数週間かかるケースも少なくありません。

また、申告期限は通常決算期末かか原則2か月以内と定められており、その間にすべての処理を完了させなければなりません。期限内に申告できないと、法人税の延滞税や無申告加算税といったペナルティが課せられる可能性もあります。

ミスのリスクと信頼性の問題

法人決算における書類作成は、数字や帳簿だけでなく、税法や会計基準などの専門的知識を前提とした業務です。簿記や会計の基本的な仕組みを理解していないまま進めてしまうと、計算ミスや勘定科目の誤りなど、さまざまな問題が発生します。

これらのミスは、税務署による税務調査の際に指摘され、ペナルティを課される恐れがありますまた、一度ミスが見つかると、企業としての信頼性に傷がつくことも避けられません。

さらに、作成した決算書は、金融機関との取引においても重要な役割を果たします。融資を受ける際には、記載内容に不備や違和感があると、融資の審査で不利に働く可能性があります。

節税への対策不足

自分で法人決算を作成すると、節税対策が疎かになってしまう可能性があります。法人税や消費税など、法人が支払う税金の金額は、適切な節税策を講じるかどうかで大きく変動します。

節税対策を適切に行なっていないと、年間数万〜数十万円単位で多くの税金を納めてしまうケースも珍しくありません。長期的に見れば数百万円レベルの損失に発展することもあります。

税理士の報酬を節約したつもりが、本来避けられたはずの税負担を背負う結果になりかねないということを理解しておかなくてはいけません。

 

法人決算を自分で行えるかどうかの判断基準

法人決算を自分でするかどうかは、個々の事業形態や経営者の考え方によって変わります。以下の判断基準を参考にしてみてください。

売上規模が小さい企業

年商1,000万円未満の小規模企業や、取引数が少ない企業は、比較的シンプルな決算書作成が可能です。複雑な取引が少ないため、専門知識がなくても対応できる場合もあります。ただし、取引の種類が多かったり、特殊な会計処理が必要な場合は専門家の検討も必要です

日頃から帳簿付けを自分で行っている

日頃から帳簿付けを自分で行っている場合は、決算作業もスムーズに進められるでしょう。会計ソフトの操作に慣れており、決算作業に集中できる環境がある方は、自力で決算書類を作成しても、問題は起こりにくいと考えられます。

 

自分で作成するなら最低限知っておくべき知識

自分で法人決算を作成する際に最低限知っておくべき知識を解説します。

必要な簿記知識

法人決算を自分で行うには、日々の記帳作業を正しく行える簿記スキルが不可欠です。最低限、以下の内容を理解しておく必要があります。

  • 仕訳の記入方法:取引内容を勘定科目に落とし込み、借方・貸方に記入する力
  • 会計期間の考え方:収益・費用の発生主義による認識
  • 期末処理:売上・仕入の未収・未払、前払・前受などの整理仕訳
  • 帳簿の種類:総勘定元帳、仕訳帳、補助簿などの役割と連携

また、簿記2級レベル以上の知識があると、よりスムーズに決算処理を行うことができます。具体的には以下の項目を理解している必要があります。

  • 減価償却とその計算方法(定額法・定率法)
  • 貸倒引当金、退職給付引当金などの引当金処理
  • 棚卸資産の評価(移動平均法・先入先出法など)
  • 勘定科目の精査(仮払金・仮受金の処理など)

こうした知識は、会計ソフトが自動で処理してくれる部分もありますが、仕組みや理屈を理解していないと誤入力や分類ミスに気づけないリスクがあります。

税務の基本知識

法人決算後には、さまざまな申告書類を税務署や地方自治体に提出する必要があります。これらの書類は、単なる転記作業ではなく、整合性をもって記入する必要があります。

【主な申告書とその内容】

法人税申告書(確定申告書別表一、四、五(一)など)
  • 課税所得金額と法人税額を計算
  • 税務調整項目(加算・減算)を記載
  • 欠損金の繰越控除や各種税額控除の適用判断が必要
消費税申告書
  • 課税・非課税売上の区分
  • 簡易課税か原則課税かの選択
  • 仕入控除税額の適用範囲などの判断が求められます
事業概況説明書
  • 業種、従業員数、事業規模などの概要を記載
  • 形式的な書類に見えても、内容に不整合があると税務調査の対象になることも
地方税関連(法人住民税・法人事業税)
  • 各自治体への申告書が必要で、法人税と連動するが計算方法がやや異なる
  • 都道府県、市町村によって様式が異なる点にも注意
法定調書・支払調書(翌年1月)
  • 税理士報酬や外注費など、源泉徴収対象取引の報告義務
  • 提出漏れにより罰則が課される場合もある

これらの書類は、会計ソフトである程度自動作成可能なものもありますが、最終的なチェックは人の目で行わなくてはいけません。

 

まとめ|法人決算は税理士に相談しましょう

法人決算は自分で対応することも可能ですが、そのためには簿記や税務の知識、作業時間、そして高い正確性が求められます。節税の観点でも、専門的な知見がなければ、かえって税負担が増えるリスクもあるでしょう。

一方で、税理士に相談すれば、複雑な決算処理や申告業務を任せることができ、ミスやペナルティのリスクを避けつつ、節税のアドバイスも受けられます。特に、融資や税務調査の際には、プロのサポートがあることが企業の信頼性にもつながります。

当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。



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