【2025年最新】事業承継・M&A補助金の概要から申請方法を解説
2025年度からスタートした「事業承継・M&A補助金」は、中小企業や個人事業主の円滑な事業引継ぎとM&Aを支援する国の制度です。この記事では、同制度の補助内容や申請方法を詳しく解説します。
M&A補助金とは何か?
事業承継・M&A補助金は、2025年から開始された国の補助金制度です。これまでの「事業承継・引継ぎ補助金」を発展させ、中小企業や個人事業主の事業承継・M&A(合併・買収)を支援することを目的としています。
この補助金制度は、中小企業庁が推進する「中小企業生産性革命推進事業」の一環として実施されています。中小企業の生産性向上と持続的な賃上げを実現するための重要な政策ツールとして位置づけられています。
事業承継・M&A補助金の背景と目的
日本の中小企業では、経営者の高齢化が深刻な問題となっており、後継者不足により廃業を余儀なくされるケースが増加しています。この状況を打開するため、政府は事業承継とM&Aを促進する政策を強化しており、その一環として補助金制度が設けられました。
補助金は次のような目的で活用されます。
- 事業承継前の取組の支援
- M&Aによる経営資源の引き継ぎに係る取組を支援
- M&A後の経営統合(PMI)に係る取組の支援
- 事業承継・M&Aに伴う廃業や再チャレンジを支援
2025年度から始まる新制度の変更点
従来「事業承継・引継ぎ補助金」という名称でしたが、2025年度から「事業承継・M&A補助金」に名称変更されています。
さらに、補助金制度内容も見直され、「経営革新枠」は「事業承継促進枠」へ名称変更されます。加えて、M&A後の経営統合(PMI)を支援する「PMI推進枠」が新設され、専門家費用や設備投資費が補助対象になります。これらによりM&A後の体制整備まで支援が拡充されます。
4つの枠組み
事業承継・M&A補助金は、以下の4つの枠に分かれています
- 事業承継促進枠:5年以内に事業承継を予定している場合、設備投資等に係る費用の補助
- 専門家活用枠:M&A時の専門家活用に係る費用(フィナンシャル・アドバイザー(FA)や仲介に係る費用、表明保証保険料等)の補助
- PMI推進枠:M&A後の経営統合(PMI)に係る費用(専門家費用、設備投資等)の補助
- 廃業・再チャレンジ枠:事業承継・M&Aに伴う廃業等に係る費用(原状回復費・在庫処分費等)の補助
事業承継・M&A補助金の要件・要項
各枠の申請条件や上限額、補助率、対象となる経費は以下の通りです。
事業承継促進枠 |
専門家活用枠 |
PMI推進枠 |
廃業・再チャレンジ枠 |
|
要件 |
5年以内に親族内承継、又は従業員承継を予定している者 |
補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者 |
M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う者 |
事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者 |
補助上限 |
800~1,000万円※ ※一定の賃上げを実施する場合、補助上限を1,000万円に引き上げ |
買い手支援類型: 600~800万円※1 2,000万円※2 売り手支援類型: 600~800万円※1 ※1:800万円を上限に、DD費用の申請する場合200万円を加算 ※2:100億企業要件を満たす場合 |
PMI専門家活用類型:150万円 事業統合投資類型:800~1,000万円 ※一定の賃上げを実施する場合、補助上限を1,000万円に引き上げ |
150万円※ ※事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、それぞれの補助上限に加算 |
補助率 |
1/2・2/3※ ※中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合:2/3 |
買手支援類型: 1/3・1/2、2/3※1 売手支援類型: 1/2・2/3※2 ※1:100億企業要件を満たす場合:1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円超の部分は1/3 ※2 ①赤字、②営業利益率の低下(物価高影響等)のいずれかに該当する場合 |
PMI専門家活用類型:1/2 事業統合投資類型:1/2・2/3 ※中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合:2/3 |
1/2・2/3※ ※事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従う |
対象経費 |
設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費 等 |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
設備費、外注費、委託費等 |
廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用(併用申請の場合のみ) |
(引用:中小企業庁)
2025年6月現在の情報です。変更となる可能性があるので、詳しい要件・要領については、公式サイト|事業承継・M&A補助金を随時ご確認ください。
申請の流れと公募スケジュール
事業承継・M&A補助金を最大限に活用するために、申請方法や注意事項を確認しておきましょう。
申請から補助金交付までの流れ
公募申請から補助金交付は次のような流れで進みます。また、補助金交付後も3〜5年間事業の状況報告をしなくてはいけません。
- 公募申請:公募期間中に必要書類を提出
- 審査:提出書類に基づく審査
- 交付決定:審査通過後、交付決定通知
- 事業実施:補助対象事業の実施
- 実績報告:事業終了後の報告書提出
- 確定検査:実績報告書の検査
- 補助金交付:検査通過後、補助金の支払い
- 事業化状況報告:3~5年間の継続報告
公募スケジュール
2025年度は3回程度の公募が予定されています。
最新の第11次公募(専門家活用枠のみ)は以下のスケジュールで実施されました
- 公募開始:2025年3月31日
- 申請受付:2025年5月9日~6月6日
- 補助事業期間:2025年7月上旬から約12ヶ月間
その他の枠は第2次公募以降が対象となります。
各枠の具体的な内容については、今後順次案内される見込みです。
補助金活用のポイントと注意事項
補助金を活用するには、事前準備が成功の鍵です。申請前に必要書類を整え、具体的かつ実現可能な事業計画を建てましょう。補助金申請では、募集期間が短いことが多く、余裕をもった準備が求められます。
また、補助対象外の経費もあるため、計画段階から対象範囲をよく確認しておかなくてはいけません。採択後も事業実施状況の報告や実績報告なども必要になります。さらに、条件を満たさなければ補助金の返還が求められるリスクもあるため、適切な運用と管理が欠かせません。
税理士や会計士などの専門家のサポートを受けることで、制度の理解や書類作成の精度が高まります。申請要件や対象事業の内容を十分に確認し、自社の状況と照らし合わせながら準備を進めることが重要です。
まとめ
2025年度から始まった「事業承継・M&A補助金」は、中小企業や個人事業主の事業承継・M&Aを後押しするために設けられた国の補助制度です。
経営者の高齢化や後継者不足といった課題に対応し、円滑な事業引継ぎや経営の安定化を図ることを目的としています。従来制度を拡充し、設備投資や専門家活用、PMI、廃業支援まで幅広くカバーします。
補助の対象や要件、注意点を事前に理解することが、成功への第一歩です。不安や疑問がある方は、まずは専門家に相談し、万全の体制づくりを始めましょう。
万が一、会計処理や税務調査に不安な点や不明な点があれば、税理士や会計士などの専門家にご相談ください。当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。