合同会社(LLC)のメリット6選|株式会社との違いも徹底比較
近年、日本の起業環境において合同会社(LLC)の設立数が急激に増加しています。Apple Japan、Amazon Japan、Google Japanなど、多くの有名企業が合同会社形態を選択していることからも、その実用性と効率性が証明されています。今回は、なぜ合同会社がこれほど注目されているのか、そのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
合同会社(LLC)とは
合同会社(LLC)は2006年の会社法改正で導入された比較的新しい会社形態で、「出資者=経営者」である点が特徴です。
これにより、意思決定がスピーディで、組織運営もシンプルです。
米国型のLLCをモデルにしており、日本でも小規模事業やベンチャー企業の法人化手段として選ばれています。
Apple Japanなど外資系企業だけではなく、多くの新規法人が合同会社を選択し、その数は徐々に増え続けています。(参考:設立10年未満の「合同会社」は業績好調 売上高1億円未満が約9割、高い成長持続 | 東京商工リサーチ)
なぜこれほど合同会社が人気なのでしょうか?
合同会社の人気の理由は、①設立コストの圧倒的な安さと②経営の自由度の高さです。
株式会社の設立には20万円以上必要ですが、合同会社なら約6万円で設立できます。
大幅なコストを削減できるので、個人事業主の法人化を後押ししてくれます。
また、迅速な意思決定と柔軟性の高い経営ができるため、事業成長を加速させます。
合同会社・株式会社の違い
合同会社・株式会社の違いを表にして、比較してみます。
株式会社 |
合同会社 |
|
意思決定 |
株主総会 |
社員総会 |
会社の所有者 |
株主 |
各社員 |
会社の経営者 (業務執行者) |
取締役 |
業務執行社員 (選任しない場合は社員全員) |
役員の任期 |
通常2年、最長10年 |
任期なし |
監査役の人数 |
1人以上 |
不要 |
会社の代表者 |
代表取締役 |
代表社員 |
決算公告 |
必要 |
不要 |
定款の認証 |
必要 |
不要 |
利益配分 |
出資割合に応じる |
自由に決められる |
登録免許税 |
15万円〜 |
6万円〜 |
資金調達 |
株式など資金調達方法の幅が広い |
株式発行ができない |
この表からわかるように、合同会社は株式会社の法人格としてのメリットを享受しながら、コストと手続きの負担を大幅に軽減できる「いいとこ取り」の会社形態といえます。
合同会社を設立するメリット6つ
次に合同会社のメリットを詳しく説明いたします。
設立費用・ランニングコストが安い
合同会社最大のメリットは、コストパフォーマンスの高さです。
株式会社では必須の定款認証(3万円〜)が不要で、登録免許税も株式会社の15万円に対し、合同会社は6万円と半分以下に抑えられます。
さらに、株式会社では毎年決算期ごとに義務付けられている決算公告(約8万円〜)も不要で、継続的なランニングコストも削減できます。
法人による節税メリット
個人事業主の所得税は累進課税が採用され、所得が上がるほど税額も高くなります。
合同会社は法人税率が適用されるため、所得が800万円以下では15%、800万円以上で23.2%と一定税率です。
また、個人事業主よりも経費として認められる範囲が広がるため、合同会社の方が節税効果があります。
経営の自由度が高く、素早い判断ができる
なぜ合同会社は経営が安定しているのでしょうか?それは、所有と経営が一致しているからです。
株式会社のような株主総会の開催義務がないため、重要な経営判断を素早く下すことができます。
出資者全員が経営に参画するため、利害関係の対立が少なく、一体感のある経営が実現します。
これにより、変化の激しい市場環境においても柔軟に対応でき、経営の安定性が保たれるのです。
利益配分を自由に設定できる
合同会社では、出資比率に関係なく利益配分を自由に決められます。
例えば、資金は少ないが技術力で貢献する人により多くの利益を配分するといった柔軟な対応が可能です。
会社への貢献度に合わせ利益配分ができるので、社員のモチベーションを向上させることができます。
株式会社へ変更可能
事業の成長に応じて株式会社へと組織変更することも可能です。
将来的な資金調達や上場を視野に入れつつ、当面は合同会社のメリットを活かすという戦略的な経営もできます。また、初めから株式会社を設立するよりも低コストです。
この場合、合同会社の設立費用と組織変更にかかる法定費用で済むため、約5万円程度コストカットできます。
事務手続きがシンプル
取締役会や監査役の設置義務がなく、シンプルな組織運営が可能です。これにより、管理コストを削減しながら、本業に集中できる環境を作ることができます。
また、株式会社では役員の任期は2年まで(非公開会社では10年)と決められていますが、合同会社では、役員の任期に関する規定がありません。
そのため、登記をわざわざ変更する必要がなく、重任登記の登録免許税(約1万円〜)も不要となります。
合同会社のデメリット
合同会社には様々なメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるので注意してください。
社会的信用力が低い
最も大きな弱点は、社会的信用力の低さです。
取引先や金融機関によっては合同会社に対する理解が不足しており、会社設立初期の信頼構築に時間を要する場合があります。
特に、大企業との取引や大型融資の申込みでは、株式会社と比較して不利になる可能性があります。
資金を集めにくい
合同会社は株式の発行ができないため、投資家からの資金調達手段が限られています。
ベンチャーキャピタルからの出資や、将来的な株式公開(IPO)は不可能です。
大規模な資金調達を予定している事業では、この制約は重大な問題となります。
事業承継・持分譲渡の複雑さ
合同会社の持分とは、株式会社の株式に似たもので、合同会社の持分譲渡は、社員全員の同意が必要です。
例えば、社員が合同会社を退社する際なども持分譲渡が発生します。この退社する社員が代表社員の場合、登記申請の変更手続きが必要です。
そのため、株式会社の株式譲渡と比べ手続きが複雑で、事業承継やメンバーの入れ替えに時間がかかることがあります。
社員同士のトラブルのリスクがある
出資額に関係なく平等な議決権を持つため、重要事項の決定で意見が分かれると事業が停滞するリスクがあります。
特に利益配分や事業方針で対立が生じた場合、解決が難しくなる可能性があります。
トラブル防止策として、業務ルールを明確にし、合意書の作成や経営方針を文書化することをおすすめします。
まとめ|合同会社の設立は専門家に相談を
合同会社は、低コスト・高い柔軟性というメリットがあります。
特に、スタートアップ、個人事業主の法人化、小規模な事業展開を予定している方にとって、非常に有効な選択肢といえるでしょう。
ただし、将来的な成長戦略や事業規模によっては、株式会社の方が適している場合もあります。また、定款の作成や各種手続きには専門知識が必要で、後々のトラブルを避けるためにも専門家への相談をおすすめします。
万が一、会計処理や税務調査に不安な点や不明な点があれば、税理士や会計士などの専門家にご相談ください。
当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。