美容室は税務調査の対象になりやすい?指摘されやすいポイントと対策
美容室は現金取引が多く、業界特有の経費処理や面貸し制度があるため、税務調査でチェックされやすい業種のひとつです。突然の調査に慌てないためには、事前に調査対象になりやすいポイントや必要書類を把握し、日頃から正確な帳簿管理と証憑の保存を徹底しておくことが重要です。
税務調査とは
税務署や国税局などの税務当局が、企業や個人の申告内容が正しいかどうかを確認するために行う調査のことです。適正な納税がされているかをチェックするために行われます。
税務調査の流れは、①事前通知 → ②事前準備 → ③調査当日 → ④調査結果の説明 → ⑤是認又は修正対応です。
税務調査について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
個人事業主でも税務調査がくる?時期や確率、対策まで徹底解説
税務調査の対象になりやすい美容室とは?
ここでは、税務署にチェックされやすいポイントをご紹介します。
近隣の美容室と比べて売上が極端に少ない
例えば、同じエリアで同じような規模のお店と比べて、明らかに売上が少ないと売上の一部を申告していないのでは?と疑われる可能性があります。税務署は業界ごとの平均的な経営データを把握しているため、極端に差があるとチェックされやすいです。
経費の割合が不自然に高い
売上に対して経費が極端に多い場合も注意が必要です。必要以上に経費を計上していないか、他店と比較しチェックされます。日々の経費処理は根拠をもって明確にしておくことが大切です。
長年赤字が続いている
何年も赤字経営が続いているのにお店が存続していると、「本当は利益が出ているのでは?」と疑われることもあります。経営実態と申告内容が合っているか、きちんと説明できるようにしておきましょう。
売上の急変動
前年と比べて売上が大きく増減している場合は、その理由を説明できる資料や記録を残しておくことが大切です。特に大幅な減少は、売上の過少申告を疑われやすくなります。
売上が消費税の課税ラインギリギリ
売上が毎年900万円台で推移し、なかなか1000万円を超えない場合、意図的に売上を調整していると見られる可能性があります。売上額1000万円は消費税の対象かどうかの分かれ目になりますので、特に注目されます。
設備投資が不自然に多い
売上が下がっているのに、最新の美容機器や内装リニューアルを行っていると、資金の出どころが疑問視されることもあります。売上とのバランスを考慮した投資計画が重要です。
現金の取り扱いが不透明
現金での取引が多いと、その分透明性も問われます。レジやPOS(販売時点情報管理)の導入、専用口座の利用などで、取引の見える化を心がけましょう。
売上と現金残高が合わない
日々の売上金と実際の現金が合っていないと、売上の一部を抜いていると見なされることがあります。日々の締め処理は丁寧に行いましょう。
プライベートと事業用のお金が混ざっている
事業用口座から私用の支払いをしていたり、その逆があったりすると、所得の計算が正しく行われていないと疑われます。個人と事業のお金は使用分としっかり分けて管理しましょう。
税務調査に準備すべきこと
税務調査が通知された場合、まずは必要な書類を整理し、準備しておきましょう。通常は直近2〜3年分を対象としますが、特別な事情がある場合は最大7年までさかのぼって調査されることがあります。そのため、以下の書類は少なくとも過去7年分は保管しておくことが望ましいです。
<帳簿関連書類>
- 総勘定元帳
- 現金出納帳
- 売上帳、仕入帳
- 経費帳(旅費交通費、接待交際費など)
- 固定資産台帳
<証憑書類>
- 請求書・領収書(売上・仕入・経費)
- 契約書(リース契約、面貸し契約など)
- 給与台帳、源泉徴収票
- 棚卸表
<売上関連資料>
- 予約台帳・顧客カルテ
- レジの売上データ
- クレジットカード売上明細
- QRコード決済明細
<銀行関連書類>
- 通帳(事業用・個人用)
- 入出金明細
- ローン返済明細
美容室が見られやすい税務調査のポイント
美容室の税務調査では、具体的に以下のような点をチェックします。
売上と帳簿のズレがないか
美容室は現金取引が多く、売上の計上漏れに対して特に厳しく見られます。POSシステムや電子帳簿を活用し、透明性のある売上管理が必要です。レジ記録と帳簿の整合性、予約台帳や顧客カルテとの売上データの一致、キャッシュレス決済との整合性などもチェックされます。また、期をまたいで売上をずらす操作(期ズレ)も不正とされるため、売上の正確なタイミングでの計上が重要です。日々の売上記録を丁寧に管理しましょう。
経費の内訳について
美容室では経費の過大計上が税務調査で最も指摘されやすい項目です。事業用と私用の支出を明確に分け、領収書や請求書などの証憑を必ず保管しましょう。特に美容師個人の美容品やファッション代を経費にしていないかがチェックされます。また、広告宣伝費についても、SNS広告やチラシ等が実際に事業に使われたものかどうかの実態が問われます。支出内容が事業に必要なものであることを明確に説明できるよう備えておくことが重要です。
在庫管理が不適切ではないか
在庫管理が不適切だと、売上や利益の操作を疑われる原因になります。年末には必ず棚卸を行い、記録を保管しておくことが必要です。期末在庫を少なく見積もると利益圧縮と判断されることがあります。消耗品の購入量と来客数、売上との整合性も重要で、高額な材料の仕入れと使用状況のバランスも見られます。仕入と在庫、売上のトータルで整合性を持たせ、実地棚卸の記録も残しておくことが信頼につながります。
人件費や面貸しの手続きが適正か
美容室では「面貸し」制度や人件費の処理が税務調査で重点的に確認されます。面貸し美容師とは業務委託契約を結ぶことが多く、契約書の内容と実態が一致していることが重要です。実質的に雇用関係にある場合、源泉徴収や社会保険の手続きが必要となります。スタッフへの給与支払いについても、適切な源泉徴収が行われているか、裏給与の有無などが厳しく見られます。業務委託料の金額も、売上に対して適正な配分かどうかが確認されます。
まとめ|美容室の税務調査に慌てず対応するには
税務調査に備えるには、売上・経費・人件費などの記録を正確に管理し、事業の実態と申告内容が一致していることが重要です。特に現金管理や面貸し契約の整合性は厳しく見られます。事前準備として、帳簿や証憑書類を整理し、いつ調査が来ても対応できる体制を整えておきましょう。
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