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入社支度金・転勤支度金を支払う場合、所得税はかかる?

人手不足に悩む企業も多い中で、採用内定者に対し就職支度金を用意して人材確保に務める企業も珍しくありません。ですが、その支度金の税務処理は、支給時期や性質によって変わってきます。

今回は、支度金の定義や税金の扱いについて解説します。

支度金の定義や意味とは?

支度金とは、物事の準備や用意をするにあたって必要な金銭を指します。身近な例では、結婚する場合に、新郎の家から新婦の家へ贈られる金銭が挙げられます。結婚支度金は、結納金と同じように、結婚式や新生活の準備のための金銭と解釈されています。

また現在では、結婚の場面だけではなく企業への就職や転勤の際に、新生活の基盤を整えるための準備金として金銭が支給される場合があり、それらは入社支度金や就職支度金、就業支度金などの名称で呼ばれています。

支度金の種類

支度金という名称が付けられるものには、次のようなものが挙げられます。

  • 結婚支度金
  • 入社支度金
  • 転勤支度金

 

入社支度金は就職支度金、就業支度金などの名称で呼ばれることもあり、転勤、海外赴任を伴うものは、会社から「転勤支度金」として準備金が支給されるのが一般的です。

結婚支度金

結婚支度金は、新郎の家から新婦の家へ渡す結婚準備金を指します。従来は、婚約に伴い両家で結婚支度金を渡す「結納」を行うのが慣例でした。ですが、近年は結納を行わないものの、親世代の意向を汲んで、新郎側が結婚支度金を準備することもあります。

結納金同様に、用途としては結婚式や家財道具の購入費用など、新生活の準備を整えるために充てるものとされています。

入社支度金

入社支度金は、会社が求職者の応募促進や内定辞退の予防など、入社に伴う社員援助を目的として支給する金銭です。

「雇用契約」が前提であり、金銭の性質としては「労務の対価」としての性質を有しているため、形式上は一時的に受け取るものであっても、税務処理上、入社支度金は一時所得に該当しません。

転勤支度金

社員の転居などが必要な場合は、「転勤支度金」の名称で金銭が支給されることがあります。所得税法上では、転任に伴う転居費用かつ通常必要と認められるものについては経費とみなされ、非課税扱いとなります。

非課税であるため、所得税の源泉徴収は不要であり、会社側の経理処理としては、旅費交通費として処理するのが一般的です。

支度金における税金の扱い

支度金を支給する際に、気になるのが税法上の処理ではないでしょうか。税務処理は、大きく分けて法人税法上の処理と消費税法上の処理があります。支度金の支給タイミングによって支度金の解釈が異なり、税法上の処理も変わってきます。

支給のタイミングが入社前の場合

入社支度金が入社前に支給される場合、所得税分については雇用契約を前提とした契約金とみなし、雑所得扱いとします。受け取る金額が100万円以下の部分については10.21%、100万円を越える部分については20.42%の源泉徴収が必要です。

消費税分については、「通常必要とされる部分」の金額ではなく、実費弁済の性質を持ちません。そのため、課税仕入れとしては扱われません。

支給のタイミングが入社後の場合

入社後に支払われた場合は、既に労務の提供が行われているものとみなします。したがって、所得税分については賞与との関連で給与所得扱いにします。賞与にするか給与所得にするかは、実態に応じて判断します。

消費税の課税についてですが、実費相当額の支払いと同等です。したがって、課税仕入れの対象になります。ただし、他社からの転職、いわゆる「引抜料」については、課税仕入れに該当するため、注意しましょう。

引っ越しを伴う入社の場合

支度金は、所得税法204条第1項第7号における契約金の一種とみなされます。この中で、就職に伴う引っ越しのための費用は、他の契約金と明確に区分して支払われることが明記されており、かつ、転居費用として認められる部分については非課税扱いとなります。したがって、所得税の源泉徴収は不要です。

消費税分については、実費相当額の支払いと同じ扱いですので、課税仕入れにします。

支度金に関するQ&A

支度金を導入する際には、「具体的にいくらが妥当なのか」「受領側は、確定申告をする必要があるのか」という疑問が浮かぶ方も多いでしょう。以下、よくある質問についての回答をまとめました。

支度金をもらった場合、確定申告の必要はある?

支度金を受け取った場合、確定申告の有無は給与所得額と雑所得の金額によります。入社前の支度金は原則として雑所得扱いですが、受領した支度金が転居費用として通常必要であると認められる金額、かつ他の支度金と明確に区分されているものは、雑所得から除かれます。

この場合、勘定項目は「旅費交通費」などの名目が付されていることが多いでしょう。考え方としては、次のような計算式が成り立ちます。

支度金ー転居費用として区分された支度金=雑所得

なお、2,000万円以下の給与所得者で雑所得が20万円を越えた場合は、確定申告をしなければなりません。

支度金における源泉徴収額はいくら?

上記でも述べたように、支度金には契約金としての性質があり、所得税法上「雑所得」として処理される場合があります。この場合、次の計算式に基づいて、所得税額の源泉徴収を行います。

1回の支度金の支払額が100万円以下の場合

支度金の支払金額×10.21%

1回の支度金の支払額が100万円以上の場合

A(100万円以下の部分×10.21%)+B(100万円を超える部分×20.42%)

入社支度金・転勤支度金の相場はいくら?

入社支度金や転勤支度金は、各社によって大きく異なりますが、概ね次のような金額を目安にすると良いでしょう。

支給例

  • 部長(配偶者+子女2人)→約27万円
  • 部長(単身者)→約13万円
  • 課長(配偶者+子女2人)→約26万円
  • 課長(単身者)→約12万円
  • 一般社員(配偶者+子女2人)→約22万円
  • 一般社員(単身者)→約10万円

まとめ

支度金は、求職者の応募促進や内定辞退の予防にも有効な手段です。ただし、支給のタイミングによっては、税務処理は大きく変わってくるため、入念に制度設計してから進めることをおすすめします。

当事務所では、支度金に関するご相談も承っております。初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお電話、メールよりお問い合わせください。

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